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われらをめぐる海

詩情ゆたかに語られる海の成り立ち

 著者は『沈黙の春』を著した海洋生物学者で作家のレイチェル・カースン。その刊行は1962年だが環境問題のバイブルともいわれ、今も読み継がれている(2013年秋・34号の小欄で紹介)。
彼女はそれから2年後の1964年に亡くなるが、生前には同書を含め4冊を上梓している。残る3作は、1941年の『潮風の下で』と1955年の『海辺』、そして、その2冊の間に出された『われらをめぐる海』(1951年)である。これらは「海の3部作」と呼ばれ、いずれもベストセラーとなり、現在も版を重ねている。
本書はまず、地球が生命の母となる海を、どのようにして持つようになったか、その起源から語り起こされる。続いて海の表層、深海の不思議、陸地との関係、風と波、潮汐、太陽と月それに地球の自転の影響、海水の成分などに触れていく。
いずれも科学的知見に基づき、客観的な視点に立つ。だがその文体は、海の堆積物を知識の宝庫である「書物」と表現したり、自然は信じられないほど「多芸」だと擬人化するなど、まるで情景描写に優れた物語のように詩情にあふれている。良質の文学作品としても楽しめるだろう。

ハヤカワ文庫NF 821 円(税込)
レイチェル・カースン 著/日下実男 訳
1907年5月27日、ペンシルヴァニア州のスプリングデールで生まれ。環境問題を告発した生物学者。アメリカ内務省魚類野生生物局の水産生物学者として自然科学を研究した。

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