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誤解だらけの電力問題

原発の是非を考える前に読む本

電力を中心とした日本のエネルギー問題について、基本的な知識から、取り巻く周辺事情、今後の動向まで、やわらかな語り口で解説する良書。著者は、東京電力に勤務していた経歴を持つ。東日本大震災に起因する原発事故当時も「被災された方々やお客さまに、全身全霊でお詫びをし続けて」(224ページ)いた社員の一人だった。
冒頭「序」と巻末「補論」を除き本文は3部の構成。第1部「エネルギーに関する神話」は、再生可能エネルギー、環境先進国といわれるドイツ、電力会社が持つ思想という3つの分野について現状を紹介する。題名の『誤解だらけの電力問題』を表す内容はこの第1部に集約されている。

第2部「エネルギーに関する基本」は、電気のつくられ方から日本のエネルギー政策の歴史まで、電力に関する基礎知識。基礎とはいえ電力業界に携わる人にも再確認の意味でぜひ目を通してもらいたい部分だ。続く第3部「電力システムの今後」では原子力を含む電力事業の問題を考える。
本書は、原発推進に反対意見を持つ人も賛成と考える人も、いや、原発の是非を真剣に考えたことがない人にこそ、読んでほしい。

ウェッジ 1,000円+税
竹内純子 著
NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員、21世紀政策研究所「原子力損害賠償・事業体制検討委員会」副主査。
慶応義塾大学法学部法律学科卒業。1994年東京電力入社。2012年より現職。国立公園尾瀬の自然保護に10年以上携わり、農林水産省生物多様性戦略検討会委員や21世紀東通村環境デザイン検討委員等歴任。その後、地球温暖化国際交渉や環境・エネルギー政策に関与し、国連気候変動枠組条約交渉にも参加。著書に、『みんなの自然をみんなで守る20のヒント』(山と渓谷社)がある。

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