長屋住まい おいしく支えた鍋料理

寒い時期に食べたくなる料理の1つが鍋料理。だしの利いた一般的な醤油や塩味のほか、豆乳やトマト、洋風のチーズや辛味のあるチゲなどバリエーションもさまざまで、熱々の具材が体を温めてくれる。今回は江戸時代に庶民の間で広まった鍋料理を紹介する。
江戸
日本では古来、主に台所のかまどで火を焚き炊事をしていたが、庶民の生活する長屋には共同のかまどしかなかった。そこに火を自由に持ち運べる七輪が登場し、食の様相が変わっていく。
中でも鍋料理は七輪にのせればそのまま卓として使え、長屋の狭い部屋にも置ける。さらに調理器具である鍋自体が食器になるため、後片付けの手間も省けると、広く受け入れられた。長屋住まいは単身者が多く、この頃の鍋は基本的に1人用の「小鍋立て」が主流だったようだ。
庶民の間でよく食べられていた鍋料理の1つがマグロのトロ部分を煮込んだねぎま鍋。冷蔵庫のない時代、魚の脂身は傷みやすく、現代では高級品のトロは多くが捨てられていた。庶民にも手に入れやすい脂身をネギやセリといった薬味や酒とともに調理することで臭みも消え、江戸を代表する鍋料理となった。
そのほか内臓や骨もそのまま食べられるどじょう鍋やだしの出るアサリ鍋、旨味をしっかり吸う豆腐鍋などさまざまなものを煮込んで食べていたようだ。味付けは主に醤油と味噌、そして食材から出るだし。食材を無駄なく簡単に調理でき、栄養も豊富な鍋料理は江戸庶民に好まれた。今でも老舗として残る鍋料理専門店にはこの頃生まれた店が多いことから外食としても楽しまれていたことがうかがえる。
現代
江戸時代は通年食べられていた鍋料理。現代は冬の食事の定番だ。テーブルにカセットコンロを置き鍋をつつくのは江戸と変わらぬ光景のように思える。食材をそのまま鍋に入れるだけで手間がかからず、骨のある魚や肉などは身から外れ食べやすくなる。余っている具材も一緒に煮込めばいい。野菜の端材の使い切りに一役買っている家庭も多いだろう。
そのうえ暖房を弱めたいほど体が温まる。江戸時代に花開いた鍋料理は食品ロスやエネルギー消費の観点からも現代に重宝される食文化だ。
























































