いい服の日(11/29)に考えたいサステナブルなファッションについて
11月29日は「いい服の日」。以前にEco Storyでもご紹介した学生服メーカーの株式会社トンボの提唱により「着る人が着心地に満足し、大人になれば自分の子どもに着せたくなるようないい服をつくる。その気持ちを新たにする日」として制定されました。
今回はいい服の日を前に、サステナブルなファッションのあり方について考えます。
ファッション産業の環境負荷が焦点に
ファッション産業は流行の先端を創り出す存在として、多くの消費者を惹きつけてきました。さまざまなブランドが開催するファッションショーでは毎年のように新たな素材やデザイン・縫製手法を取り入れた衣服がお披露目され、その年のキーワードやトレンドに注目が集まります。その一方でファッション産業は大量生産・大量消費を前提としたマス・マーケティングが主流でした。ファッション産業はすそ野が広く、原料調達から紡績、染色、縫製、裁断・縫製と工程は多岐に及びます。そして、これらの各工程は多くの環境負荷を生んでいます。たとえば衣服1着をつくる際のCO2排出量は約25.5kg、水の使用量は約2300Lです。さらに衣服にならなかった端材は年間で4.5万t発生し、これらのほとんどが廃棄されています。なお、現在の日本で売られている衣服の98%は海外からの輸入のため、船便など化石燃料を使用し、消費者の手元に届けられているのが実情です。
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エシカルファッションの重要性
ファッション産業では環境面だけでなくそこで働く人々の労働問題や人権問題といったエシカル(倫理)面も注目されています。
たとえば大手ブランドが開発途上国で女性や児童を安い賃金で働かせていたり、立場上の優位さを利用して不当に安い価格で商品を仕入れたりしていたことが発覚して問題になりました。
また、日本国内でも縫製企業における海外からの技能実習生の待遇などが問題となったケースがあります。
こうした問題を防ぐためにブランドはサプライチェーン全体にわたって監視を強める必要があります。環境に配慮された原料であるか、製造工程で自然を破壊していないか、公正な労働条件・取引条件のもとに契約が結ばれているか、積極的に廃棄物削減やリサイクルに取り組んでいるか。消費者団体のなかにはこうした点に留意した商品を「エシカルファッション」と定義し、消費者に推奨するところもあります。
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ファストファッション化が進む
近年は衣服の消費サイクルが短くなり、大量消費・大量廃棄が進んでいるといわれています。 たとえば日本のアパレル市場は高齢化・人口減などの影響で年々縮小傾向にあります。1990年の市場規模は約14.4兆円でしたが、2020年には約9.9兆円でした。これに対し供給点数は増加しています。1990年の衣服供給点数は約20億点でしたが、2020年は約35.7億点となっています。
市場は縮小しているのに供給点数は増えている。その背景には衣服1枚あたりの単価の低下とともに消費・廃棄のサイクルが短くなる「ファストファッション」化が進んだことがあります。 私たち消費者サイドもファッションとの付き合い方について改めて考える必要があります。
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ファッション産業にも変化が
現在、世界では大手ブランドが中心となり、取引先の労働条件をはじめ気候変動への対応、生物多様性への配慮などを含め、フェアな取引が行われるよう「ファッション協定」を結ぶ例が見られます。材料調達の透明性を高める、低負荷な包装資材の活用を進めるなど、少しずつ改善を図っています。
日本では2021年にファッションに携わる企業の任意団体「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)」が結成され、2023年11月現在で正会員23社、賛助会員42社が参加しています。「衣類回収のシステムづくりと繊維リサイクルの高度化」といった政策提言を行うなど、業界全体のサステナビリティ確立のため、知見の共有と関係団体への働きかけなどを行っています。
また、小規模ブランドのなかにはサプライチェーン全体のサステナビリティを重視し、有機栽培で育った原料やリサイクル原料のみを使用し、エシカルな工程でつくられている衣服だけを販売するような企業が続々と誕生しています。国内で廃棄されていた衣類や帆布などを原料にして加工・販売するブランドもあります。
大量購入して飽きたら使い捨てるのでなく、つくり手に敬意を払いながら大切に長く使う。サステナブルでエシカルなファッションが定着することは、環境問題悪化の防止にもつながりますが、何よりのメリットは私たちが気持ちの部分で少し豊かになることではないでしょうか。興味のある方は身近なブランドがどのような事柄に配慮しているのか調べてみても面白いですよ。
記事中のデータの出典はこちらです!
環境省・サステナブルファッションに関するウェブサイト
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/
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