サステナブルノート

省エネ、エコといった日常の暮らしに彩りを添える豆知識から、地球温暖化や環境問題まで、サステナブルな暮らしを送るのに役立つ広範囲な情報を紹介。また、随時特集と銘打ってその時期ホットな話題を深掘りします。

地球にやさしい再エネ「地中熱」利用のススメ


  
2050年のカーボンニュートラルをめざして再生可能エネルギー(以下、再エネ)の活用が進んでいます。再エネでは太陽光や風力などの発電方式が有名ですが、今回紹介するのは地中にある「熱」を冷暖房などに活用する方法です。地中にあるエネルギーを取り出し、利用するだけで、熱源などが不要なため、一般的な冷暖房よりも省エネ効果が高いという特長があります。今回は地中熱の活用方法を紹介します。



地中熱とその特長

 

地中熱とは地中の深さ20メートルから100メートルくらいまでで存在する熱を指します。実は地面のなかは年間を通じて10度から25度と一定しています。大体地表から10メートルくらいの深さでその地域の年間平均気温と同等の温度となることが知られており、以降は100メートル進むごとに2度から4度ほど上昇することがわかっています。これらの熱を熱交換装置などを使い、夏場の冷房や冬場の暖房、さらに道路の融雪装置や温水プールの熱源などにも活用しています。たとえば2012年に開業した東京スカイツリーでは、商業施設である東京スカイツリータウンおよび周辺地域の一部建物で空調に地中熱を活用しています。

ちなみに、現在進められている再エネの活用方法で「地熱発電」という方法があります。これは地中2000 メートルから3000 メートルというという地面の深いところにある200 度から300度と高温の水蒸気でタービンを回して行う発電方法です。一般的な地中熱とは深度と活用方法が異なります。

 

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地中熱の活用方法


  

年間を通して安定した温度を保っている地中熱はどのようにして活用されるのでしょう。主な活用方法の1つにヒートポンプがあります。ヒートポンプとは文字通りヒート(熱)をポンプする(圧力を利用して移動させる)こと。原理としては地中に伸びた管に水や不凍液を流し、これを空調の熱源として活用し、地上の熱を地中の熱に移す、または地中の熱を地上に移します。

地中熱を活用するメリットはいくつかあります。まず、一般的なエアコンより省エネになること。たとえば真夏に室外機を使って熱を交換する場合と地中で熱を交換する場合を比較すると、温度の低い地中の方が交換器に負荷をかけずに交換できるため、省エネになります。一般的な空調システムに比べ40%ほど省エネになるといわれています。

また、地中熱を暖房に使用する場合、ストーブなどの暖房器具と違って二酸化炭素が発生しません。これも地球温暖化の防止に役立ちます。さらに地中熱は太陽光や風力での発電と異なり、天候に左右されない点も大きなメリットです。

 

 

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ネックは価格?


  

実は欧米では日本よりも地中熱の導入が進んできました。それに対し、日本で導入が進んでこなかった理由の1つに、地盤の違いがあるとされています。欧米は岩盤地層が多く、熱交換の効率を高められるのですが、日本の場合は砂や泥など隙間が多い地層のため、効率が若干落ちてしまうのです。

また、地中深くにパイプなどを通すため、どうしても一般的な空調設備を導入するよりコストがかかります。こうした点がネックとなり、これまで普及が進んできませんでした。 しかし、日本は現在2050年のカーボンニュートラルに向け、さまざまな温暖化ガス削減対策に取り組んでいます。その観点から地中熱の活用は欠かせないと考えられており、現在、事前の検査方法の低コスト化といった対策が取られています。さらに既存の井戸を活用する方法なども検討されており、今後は低コスト化が進むことが予想されます。

  

  

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地中熱活用の今後


2025年4月には新築住宅の省エネ基準適合が義務化され、2030年度以降の新築住宅・建築物については、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能を確保する必要があります。地中熱の活用はその場合、建物の機能向上に大きく貢献すると予想できます。

現在でもすでに東京スカイツリーのほか、羽田空港ターミナルビルなどで地中熱を活用した空調が導入されています。大規模なビルなどは建物の基礎を支える柱を地中深くの硬い地層に入れるため、地中熱の活用と相性がよいとされています。

また、地中熱の活用方法は空調に限りません。融雪や給湯といった熱源としての活用方法のほかにも、地下に熱をためておく貯熱槽のような使い方についても研究が進められています。

今後のカーボンニュートラルに向け、大いに注目度が高まる地中熱の活用。その活用方法の多様化が期待されます。

 

 

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