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地球温暖化すでに1.1℃

追加対策は必須 IPCC最新報告書公表

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC: ページ下部に用語解説)は2023年3月、最新の第6次統合報告書を公表した。人間活動が地球温暖化を引き起こしたことに疑いの余地はなく、2011〜2020年には産業革命前(1850〜1900年)に比べ世界平均気温が1.1℃上昇しているなどの科学的評価を示した。温室効果ガス排出削減に関する追加対策の必要性があらためて浮き彫りになった。
 IPCCは世界第一線の研究者らで組織され5〜8年ごとに評価報告書を作成している。今回の第6次統合報告書はコロナ禍の影響で9年ぶりの公表。執筆には約800人の専門家が参加した。2023年3月の各国政府が参加する総会での承認を受け公表された。
 人為的な気候変動が、大気、海洋、雪氷圏、生物圏といった自然と人間に対し、広範で急速な悪影響および損失・損害をもたらしていると指摘。パリ協定の1.5℃目標を達成するには、2021年10月までに発表されている各国の温室効果ガス排出量の削減目標では足りないとした。
 このままでは今世紀中に1.5℃を超える可能性が高く2℃以下にすることも困難になる。それを抑えるためには2019年の排出量に比べ2030年に43%、2035年に60%、2050年に84%の排出削減をしていく必要がある。
 今後10年間でどのような選択をし実施していくかは現在から数千年先まで影響が及ぶ。温暖化抑制の目標を遂げるためには投入する資金を何倍も増加させなくてはならないだろうとする。
 そうした危機的状況を示す一方で前向きな予測も挙げる。温暖化による将来の環境変化の一部は不可避で不可逆的なものもあるが世界全体の大幅で急速な温室効果ガス削減を持続すれば、その抑制は可能になるという。
 また、温暖化が1.5℃など特定の水準を超えた(オーバーシュート)としても、二酸化炭素(CO2)排出量の実質マイナスを実現し持続させれば温暖化は徐々に低減する。ただその場合には、CO2除去(CDR)の追加的導入なども欠かせず、オーバーシュートするときの規模や期間によっては追加的なリスクももたらされる。
 次の第7次報告書の作成は2023年7月の総会で議長団選挙が行われスタートする予定。


気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された政府間組織。地球温暖化など気候変動の状況を分析し評価している。195の国と地域が参加する(2023年3月時点)。自ら研究はせず出版された文献に基づいて定期的に評価報告書(今回が6度目)を作成。報告書は国際会議や各国の国内政策における基礎情報として強い影響力を持つ。

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2023年4月26日更新 サステナブルノート
『IPCCが第6次統合報告書を公表 温暖化対策待ったなし』



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