江戸東京博物館@東京都墨田区|顧みる! 江戸の循環型社会
東京都墨田区にある江戸東京博物館は、江戸東京の歴史と文化を振り返り、未来の都市と生活を考える場として1993年に開館した。常設展では、徳川家康が江戸に入府してからの約400年間を実物資料や復元模型などを用いて紹介。年数回開催される特別展、講座や体験教室など、さまざまな活動が実施されている。今回は江戸時代の循環型社会について、学芸員の小酒井大悟さんに話を伺った。
1590年、関東に入った家康は江戸を本拠地とし、1603年に幕府を開く。江戸の都市開発を進めるため、日本橋を中心に堀や道を設け、江戸城の周囲を、武家や町人、寺社の居所と定め「町割り」を行った。
庶民の多くは江戸の町の約2割に当たる地域に長屋という住居で暮らしていた。長屋の内部は複数の住戸に仕切られており、それぞれに2〜3名ほどの世帯が生活。大工のような職人や棒手振りの小商人など、さまざまな職業の人々が助け合いながら暮らしていた。そこでは井戸やごみ溜め、雪隠と呼ばれる手洗い場を共同で使用する。今も使われる「井戸端会議」という言葉は、長屋で暮らす人々が井戸の周りで世間話をしたことに由来している。
江戸時代の長屋を再現した展示物。
こうした暮らしの中に定着していたのが、徹底したリサイクルだ。江戸は大消費地であり、当時は資源が少なかったため、ものを大切にする習慣が身についていた。例えば雪隠に溜まったし尿は、近郊農村の農民が買い取った。これを肥料として生産した農作物は江戸で販売された。
金物や衣類など多くの日用品も再利用される。着物は古着売りなどから買ったのち、自身で修繕や補強を入れることはもちろん、何度も仕立て直しや、縫い目をほどき反物に戻してから洗濯する洗い張りをした。使い古した着物は、端切れにしておむつや雑巾、かまどの焚きつけとして使用。その灰は「灰買い」という業者に回収され、肥料や焼き物の釉薬として活用された。
「当時の人々は地球環境を考えて、ものを再利用・リサイクルしていたわけではありません。もし簡単に資源が手に入っていれば、循環型とされる社会は成立していなかったかもしれません。でも、ものが溢れた現代に生きる私たちが、彼らのものを大切にする姿勢を振り返る価値はある」と小酒井さんは話す。
高度経済成長期以降、日本では「消費は美徳」とされ、お金さえ払えば何でも手に入る時代となった。それでも現代に生きる私たちには「もったいない」という精神が根づいている。それは江戸時代から引き継がれた心なのかもしれない。ものが大量生産される一方で、再利用の活動も広がる昨今。その活動の源泉はどこにあるのか、この博物館で見つけられる。
江戸時代の長屋を再現した展示物。
施設名●江戸東京博物館(えどとうきょうはくぶつかん)
住所●東京都墨田区横綱1-4-1
電話●03-3626-9974(代表)
営業時間●9:30~17:30(土曜は19:30まで。入館は閉館の30分前まで)
休館日●毎週月曜日(月曜が祝日または振替休日の場合はその翌日)、年末年始
常設展観覧料(特別展は別途料金)●
一般:600円、大学生・専門学校生:480円、
高校生・中学生(都外)・65歳以上:300円、
中学生(都内在学または在住)・小学生・未就学児童:無料
※団体割引あり
ウェブサイト● http://edo-tokyo-museum.or.jp/
こぼれ話
今回江戸の循環型社会のほか、「井戸端会議」という言葉は、長屋で暮らす人々が井戸の周りで世間話をしたことに由来しているというこぼれ話も伺えました。現代で使われている言葉は、このように昔の人々の暮らしや考え方に関係しているものがあるようです。例えば、「くだらない」という言葉。江戸時代、朝廷のある京都から江戸に入る品質のよい品は”くだりもの”と呼んでいました。つまり、高価なものはくだり、安価(つまらない)なものはくだってこない。ここから「くだらない」という言葉が誕生したそうです。こうして言葉の由来を辿ってみるのも面白いですね。
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性格:ネチネチしてそうに見えて、サッパリしているといわれます
女性らしいと思ったけど、実際おじさんぽかったと振られたことがあります
好きな食べ物:モスバーガー・アジの南蛮漬け
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