【第13回】モビリティでの水素活用をてこに脱炭素/郡山市

運輸部門の対策急務

 郡山市は2050年の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを表明し、郡山市気候変動対策総合戦略に沿って気候変動対策を進めている。

「2020年度の温室効果ガス排出量はCO2換算で266万8000トン。基準の2013年度から15.8%減少しました。CO2の排出内訳で最も多いのは運輸部門で、主な要因は乗用車による排出量の増加です。2013年度と比べ約13%増加しており、その対策が急務です」(環境政策課気候変動対策推進室長・国分 正幸さん)

 そこで現在進めているのが水素燃料電池自動車(FCEV)や電気自動車(BEV)など次世代自動車の導入だ。市ではFCEV1台とBEV30台以上を公用車にしたほか、次世代自動車購入時の補助金制度などを用意しており、市民にそれらエコカーを身近に感じてもらうべくさまざまな取り組みを打ち出している。

 SDGs未来都市にも選ばれている郡山市。脱炭素社会の構築に加え、持続可能な経済成長の実現も目指している。そのために重視しているのが水素社会の形成および再生可能エネルギー(再エネ)の活用だ。

 

郡山市が導入したFCEV(トヨタ・ミライ)。

 

水素からごみ削減まで

「現在、市を挙げて水素利活用の促進を図っています。2018年に郡山市水素利活用推進研究会を立ち上げ、産学金官で導入に向けた環境整備を進めています。市内には国立研究開発法人 産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所(FREA)が開設されており、こちらとも密な連携を取りながら、モビリティでの水素活用を中心に進めています」(環境部次長兼環境政策課長 大越 洋子さん)。

 2022年には研究会の会員企業が市内に商用水素ステーションを開設し、FCEVの登録台数も増加するなど、水素利活用の機運は高まりつつある。

 また、市民を対象としたエコキュート、蓄電池・太陽光発電セット、エネファームといった再エネや水素利活用の設備に向けた補助金も支給範囲を徐々に広げるなど充実を図っている。市全体の再エネ比率は2020年度が18%で2013年度以来、増加傾向を継続している。

「市長の脱炭素に関する考え方は“まず市役所職員が模範になろう”であり、私たちも紙ごみの削減やリサイクル促進など、業務を通じてできることに地道に取り組んでいます」(大越さん)

「市役所職員が地域の省エネやエコ活動をけん引するのが、私たちが描く脱炭素の理想です。目標実現は容易ではありませんが、市全体で一丸となって取り組みを進めます」(国分さん)

 2050年のゼロカーボン実現に向けて同市では水素の利活用からごみの削減やリサイクルまで、できることはすべてやろうと考えている。

 

こぼれ話
 本文中でごみの削減およびリサイクルの取り組みを紹介しましたが、実は2020年度の郡山市では1人当たりの1日のごみの排出量が1,190グラムとなり、人口20万人以上の中核市62市のなかでワースト1になってしまったそうです。市の関係者はこれではいけないと強い危機感を覚え、食品ロス削減を実現するレシピ集を作って配布したり、粗大ごみを地元のネットワークでリサイクルしてもらうよう呼び掛けたり、コンビニチェーンの協力の下、ペットボトル回収機を設置してもらったりするなど、様々な施策に取り組んでいきました。市役所の皆さんも積極的にごみの削減に取り組み、紙ごみなどは以前に比べて大幅に減らせたとのことでした。
現在では市全体でごみの削減は徐々に進んでいるとのことで、ごみ削減にかける思いを担当者から直々に聞けたことが印象に残っている今回の取材でした。

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