燃え残りの灰も貴重な資源
江戸時代はさまざまな日用品を最後は燃料として燃やして使い切り、残った灰さえも灰買いと呼ばれるいわばリサイクル業者によって回収・売買されていた。現代の生活では見かけることも少ない灰。どのように利用されていたのだろうか。
江戸
強いアルカリの性質を持つ灰は、江戸の人々にとても重宝されていた。農作物を育てるための肥料、山菜をはじめとする食材のあく
抜き、日本酒づくり、藍染め、といった多様な用途に利用されていたようだ。
着物の定番色ともいえる濃い青色が特徴の藍染めでは、染料をつくるときに灰を使う。原料の藍の葉からつくった「すくも」と、灰を水に浸した上澄み液(灰汁)を混ぜて発酵させ、化学反応で藍色のもとになる染料を抽出する。これを反物に染み込ませて鮮やかな藍色にする。この頃の庶民に普及した木綿の生地と、この染料の相性がよかったため藍染めの着物が多く着られるようになった。
醸造したもろみに灰を加えた「灰持酒」は奈良時代頃より存在したが、手法は江戸時代にさらに進化し、にごり酒に灰を混ぜ、まろやかで澄んだ清酒ができるようになったといわれる。
まだ化学という認識がない時代だが、人々は灰を化学的に利用した。実地の経験に基づき活用され、そこから生まれたものが、現代にもなじみ深い人気の品につながっている。
現代
アルカリ性の灰は油汚れやタンパク質汚れを落とす効果がある。灰とお湯を混ぜてつくる灰汁はキッチン周りの油汚れを落とすのに有効だ。屋外バーベキューやキャンプの焚き火で出た灰を料理に使った鍋に入れて、油と混ざったものを拭き取ってから洗うと、洗剤を使わず水も節約しながらきれいにできる。
ほかにも、酸性に傾いた土の中和とともに灰に含まれるリン酸やカリウムといった肥料成分で土壌を改良したり、灰汁を害虫の駆除に利用するなど家庭菜園にも役立てられる。
とはいえ日常生活では目にすることも減った灰。試すとすれば仏壇の線香の灰が溜まったときくらいか。
電気に関する総合サービスを提供する日本テクノの広報室です。エコな情報発信中。