COP29を振り返る~成果と課題~
11月11日から22日にかけてアゼルバイジャンの首都バクーで第29回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP29)が開催されました。今回はこの会議で決まったことと今後に向けた課題を紹介します。
COPとは
COPとは締約国会議(Conference Of Parties)の略で、環境問題に限らず条約を結んだ国同士の話し合いのことを指します。今回紹介する「国連気候変動枠組み条約締結国会議」ですが、こちらの正式名称はUnited Nations Framework Convention on Climate Change(略称UNFCCC)です。COP29は世界198の国と機関が参加して行われました。
途上国への拠出額を3倍に
COP29の大きな成果として以下の2点が挙げられます。
①発展途上国向けの「気候資金」の大幅引き上げ
②排出削減量取引ルールの合意
順に見ていきましょう。
まず①ですが、途上国向けに温暖化対策として先進国が拠出する「気候資金」を現在の目標である年1000億ドルから3倍の年3000億ドル(約46兆4000億円)に増やすことで合意しました。さらに2035年までに世界全体で官民あわせて途上国への支援額を少なくとも年1兆3000億ドル以上に増やす目標も採択されました。
ただし、途上国の間では不満の声も上がっています。実は当初の途上国の要求は年1兆ドルでした。これに先進国が慎重な姿勢を見せ、両者はなかなか歩み寄れませんでした。結局会期を2日延長し、現実的なラインとして3000億ドルで決着が付きました。
関連コラム
排出削減量取引ルールの合意
②の排出削減量取引ルールについて合意が図れたことも大きな成果です。
排出削減量取引は、先進国が温室効果ガス排出削減につながる技術などを途上国に提供し、途上国が削減した排出量の一部を先進国側の実績として算入できる仕組みです。途上国にはこれまで有効な排出量対策が取られていなかった国が多く、そうした国や地域に先進国の技術を導入することで大幅な削減が見込めます。今回合意がなされたことで具体的な手続きや登録簿の活用方法といった運用面でのルール化が進むと予想されています。具体的な枠組みが決まれば途上国への支援が加速し、温暖化が食い止められる可能性が高まります。
関連コラム
今後に向けた動き①アメリカの動向
今後に向けた動きで最も注目を集めているのがアメリカの動向です。2024年の大統領選挙で勝利を収めた共和党のドナルド・トランプ氏は気候変動対策に懐疑的で、今後も化石燃料を重視するといった発言を繰り返しています。また、温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱を示唆しています。気候資金の拠出はパリ協定のルールに則って行われています。アメリカがパリ協定を離脱すれば今後の先進国からの気候資金にも大きな影響を与えるでしょう。気候資金が減額されれば、温暖化の進行が加速する可能性もあります。
環境ニュース
環境ニュース[国際]
2023年平均気温産業革命前から1.45℃上昇
今後に向けた動き②中国の動向
中国は2024年現在、世界で2位の経済大国であり、同時に世界最大の二酸化炭素排出国です(外務省サイト)。しかし、中国は国連の区分では途上国と定義されるため、「気候資金」への負担はしなくてよいことになっているのです。こうした姿勢に先進国は反発し、中国も応分の負担を負うべきだとする声が上がっています。こうした反発をかわすため、今回のCOP29で中国は「2016年以降、中国は他の途上国の気候対策のために約240億ドルの資金を提供してきた」と発表していますが、今後は中国にも気候資金の負担を求める国が増えるでしょう。
関連コラム
環境ニュース[国際]
アジアの脱炭素11カ国連携
温暖化を食い止めるために
COP29では数々の合意が生まれました。しかし、残念ながらこれらの対策に強制力はありません。各国が本気で積極的に取り組まなければ、温暖化を食い止めることは難しくなります。温室効果ガス削減は国および公共機関の働きかけにくわえ民間や家庭の取り組みも重要です。日頃から不要な電気を使わない、食品ロスを出さないなど、身の回りでできる取り組みを重ねていきましょう。
関連動画
自然に寄り添う宿を目指して、もてなしの気持ちを込めた省エネ 【第359回】旅館紅鮎
電気に関する総合サービスを提供する日本テクノの広報室です。エコな情報発信中。