• 中小企業のSDGs
  • 企業の事業内容に沿って、どのようなSDGsの目標達成が図れるのかを解説していく

【第14回】自動車関連業界の一員としてできることから始めた活動

企業の事業内容に沿ってSDGsの目標達成について考える本コーナー。今回は教育・学習支援業の取り組みを紹介する。


 1962年設立の市川自動車教習所(千葉県市川市)は、地域の交通教育の中心的な役割を担っている。SDGsに本格的に取り組み始めたのは2022年6月。免許取得人口の減少や少子高齢化により縮小傾向にある業界の中で「サステナビリティを意識しない企業は生き残れない」という危機感があった。
 まずはできることから始めようと、営業企画課が中心になり活動を進めた。最初に着手したのはペーパーレス化。監督官庁とのやり取りや申請などはデジタル化されていない業務も多く完全な紙の廃止は困難だが社内で完結する業務だけでも変えていった。書類の電子化は業務効率も上がる。受け取り後すぐデータ入力する来所者の申込書などは裏紙を使うようにした。
 社内だけでなく地域社会にも目を向ける。春と秋の交通安全運動で使う横断用の旗は、管理する公立小学校で予算がつかず古いまま使い続けていた。そこに新品の100本を寄贈した。
 意図せず取り組みが進んだ例がある。「オンライン学習」がその1つだ。コロナ禍の緊急事態宣言時、自動車教習所は休業要請を受け、学科・実技ともに講習ができなかった。要請解除後も3密を避けるため集合型講習の開催は難しかった。そこで業界と監督官庁が協力してつくったのがオンライン学習システムだ。これは現在でも活用しており、時間の確保が難しい子育て世代や、時間割に縛られず早期に免許取得したい層など幅広い受講生に好評だ。「当初はやむを得ず開始した対応でしたが、多くの方に教育の機会が広がったという意味で思わぬ副産物になりました」(営業企画課担当者)。

今後は増加する外国人受講生への対応にも力を注ぐ

 実地教習で運転の回数と時間が定められている以上、二酸化炭素(CO2)排出は避けられない。「今後を見据え、電気自動車(EV)やハイブリッドの教習車を用意し受講生が触れる機会をつくる、それに応じた教習内容を加えて知識を提供していくなど、時代の変化に柔軟に対応していきます」。
 自社、受講生、地域社会にとって最も適切な教習所の在り方を、SDGsの目標に照らし合わせながら模索し続けていく。

 

こぼれ話

自身が免許を取りに通って以来、10数年ぶりに自動車教習所を訪れました。校内がとても明るい雰囲気だったのが印象的でした。環境活動に対する意識が従業員の皆さんにも浸透しているとのことで、それが和やかな空気にもつながっているのかな、と感じました。地域の活動としては、本文に記載した横断旗の寄付以外にも教習所周辺の美化活動を年に数回行っているそうです。「清掃は大事ですもんね!」と単純にお話を聞いていましたが、「秋になると落ち葉がきれいなのですが、よく滑るので……。自転車やバイクが通るときに危険なんです」という事情も。教習所ならではの視点にはっとさせられました。
免許取得にあたり、実地教習は一定時間以上行わなければならないので、現状ではCO2排出削減がなかなか難しいというのは想像しやすいかと思います。その中でも、世の中の動きに逆行することなく柔軟に対応していくため、自動車教習所としてできるアプローチを常に考えていると取材した担当者の方は話してくださいました。自動車を運転する一市民としても、無駄なアイドリングの防止などのエコドライブを意識していこう、と身が引き締まった取材でした。


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