【第14回】75%削減、給水、EMS、再エネ…美しい水と緑を次世代へ/昭島市

2030年カーボン25

 豊富な水資源があり、深層地下水100%で上水道を賄う都内唯一の自治体・昭島市。2022年5月、美しい水と緑を将来の世代に残すべく「昭島市気候危機・気候非常事態宣言」を行った。対策推進のための決意としてゼロカーボンシティも宣言し、同年に改定した昭島市環境基本計画に沿って気候変動対策を進めている。

 2021年度の市内全域の温室効果ガス(GHG)排出量は2000年度比で約6.7%減少している。太陽光発電設備の設置やLED導入への補助金などを用意する一方で、将来を見据えて小学校への出張授業などを通じ環境問題を考えるきっかけづくりにも力を入れている。排出量削減の成果は今後広がっていくだろう。

「一方で私たちは、事業者としての市役所の事務事業からの排出量を、2030年度までに2013年度比で75%削減する“2030年カーボン25(ワンクォーター)”という目標を掲げています。行政側が本気で行動する姿勢を見てもらいたいと考えています」(環境部環境課カーボンニュートラル担当係長・長谷川亨さん)

 ほかにも取り組みは多数ある。例えば、豊富な水資源を活用する「給水スポット」の設置。使い捨て容器を減らしマイボトルの持参が促されるよう市内4ヵ所に設置し、今年度新たに1基設置を予定している。環境配慮のさらなる向上と地域社会の持続的発展に貢献するため「昭島市環境配慮事業者ネットワーク」も組織した。ここでは、意見交換や交流事業などを行っている。

 

市内の給水スポット。上に乗っているのは昭島市の公式キャラクター・ちかっぱー。

 

EMS、再エネ100

 対策推進に当たり昭島市環境マネジメントシステム(EMS)も構築した。年度ごとに取り組み目標を定め、PDCAサイクルで進捗を管理している。始めたのは2003年。以降、国際規格を踏まえながら独自に内容を進化させ運用を続けている。

「全部門にEMS担当を配置し、計画作成から活動状況の調査・把握まで、各部署の職員が行います。EMSがあることで職員一人ひとりの自主的な取り組みが進むなど、意識面で定着が図れていると感じています」(環境部環境課計画推進係・渡辺あゆみさん)

 また、ゼロカーボンシティ宣言と同じタイミングで、使っている電気を100%再生可能エネルギー(再エネ)に置き換える枠組み「再エネ100宣言RE Action」にも参加した。2024年7月現在386のメンバーが集う中小企業・団体版RE100だ。昭島市の施設における再エネ導入量は、枠組み参加前の1.58%から2023年には18.2%になり、その割合は現在も順調に増えている。

 限られた財源を有効に使うためには施設の省エネ改修も有効になる。現在、老朽化した市民交流センターを建て替え、Nearly ZEBを目指す(仮称)昭島市民総合交流拠点施設の建設を進めている。同施設では、地中熱を利用した空調設備や太陽光発電設備の設置を予定している。

 昭島市は今後も、考えられることはすべて実行し、地道に、しかし着実に、排出削減に取り組んでいく考えだ。

 

こぼれ話
 豊かな自然を誇る昭島市。実は昭和の時代にクジラの化石が出土したことがあり、以来クジラは昭島市のシンボル「アキシマクジラ」として親しまれています。多摩川のサイクリングロード近くにある「くじら公園」はその出土場所。私も時々自転車で通っており、その存在は知っていました。
 しかし、日ごろから身近に感じていた土地ですが、都内で上水道を全量地下水で賄っているのは昭島市だけということは知りませんでした。市役所の最寄り駅であるJR青梅線東中神駅前に写真の給水スポットがあります。取材当日、自前のペットボトルに給水スポットの水を入れ、飲んでみました。甘くて柔らかい水でおいしかったです。

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