Vol.4 暮らしと密接に関わる自然景観 一の瀬草原の眺望回復へ|中部山岳国立公園
3000メートル級の山々が連なる北アルプスエリア。剱岳や槍ヶ岳など日本屈指の名峰が集中する一帯が中部山岳国立公園だ。傑出した山岳の景観、高山特有の生態系、火山と氷河がつくり出した渓谷やU字谷など、数々の魅力が評価され1934年に国立公園に指定された。今回は、中部山岳国立公園管理事務所の竹形賢二さんに公園の中でも草原の自然を満喫できる乗鞍高原の景観維持について話を聞いた。
乗鞍エリアの特徴は人の暮らしと環境が両立していること。この地域は山岳地帯にありながら、周囲の火山から流れ出た溶岩によって形成された平らな高原になっている。明治・大正時代以降はここで夏季に蕎麦などの畑をつくっていた。古くからの放牧地でもあった。
そうして人の手が入ることで池や湿原が点在する草原の環境ができていった。その代表が「一の瀬草原」で、シラカバが林立し、ミズバショウの群生地もあり、多種多様な山野草・生物が確認されている。
しかし時代の変化とともに放牧は減少。2000年代にはゼロになってしまう。以前は放牧で樹木が育たなかった草原は、それがなくなり植物が生い茂るようになる。林に変わる草原に危機感を持った地元の人々は伐採などを行ったが次第に植物の成長速度に追いつけなくなっていった。
「草原は植物、昆虫、鳥類、哺乳類など生物多様性の宝庫。森林に変わればその多くが失われる。それらの保護と景観回復のため2020年頃から環境省としても一の瀬草原の草原再生を事業化し、地域の皆さんと共に草原再生作業や"草原再生の手引き"作成の支援などを行っています」
とはいえ、人の営みにより自然に形成された草原景観。切るべき木、残すべき木が明確に決まっているわけではない。当時の放牧の写真を見て推察したり、カエデやウルシなど「きれいな木は残したい」という地元の要望を反映するなど草原再生作業は手探りだ。
広大な草原に草原再生のゾーニング区域を設定し、その区域全体を3年かけて伐採。3年おきに実績などを踏まえて振り返りを行い、これを繰り返して整備する計画だ。放牧が行われていた頃の美しい景観を完全に取り戻すにはまだ時間がかかるが、開始から数年ですでに眺望の回復は見られ、トレイルコースの途中にある「まいめの池」からは、草原、池、シラカバ林の向こうに雄大な乗鞍岳を一望できる。

また、一の瀬草原周辺は第2種特別地域という利活用に関する制限が比較的緩やかな場所だ。そのため、自然の中をマウンテンバイクで駆けるなど、ほかではできないアクティビティが楽しめる。2021年には国立公園初のパブリックトレイルコースも整備された。自然と触れ合える楽しみ方を通じて、環境保護に対する理解や意識が広まることが期待されている。
一の瀬草原を含む乗鞍高原の先には乗鞍岳がある。標高2700メートルの畳平までバスで行けるため、約1時間半で登頂が可能だ。登山の入門コースとして人気な一方、麓から登る登山者もいて、初心者から上級者までレベルに合わせた楽しみ方ができる。「マイカー規制やバス乗車前の種子除去マット設置など、手つかずの自然を保護する山岳地域と、人の手により昔ながらの景観を保つ草原地域。どちらも来訪者を魅了する美しい風景です。ぜひ一度訪れて、感動を味わってください」。
現地訪問レポート
前回、大雪山で10年ぶりの山歩きを楽しんだ私。今度は乗鞍岳で秋山登山にチャレンジだ!と意気込んでいたのですが、訳あって取材が11月初旬に食い込んでしまいました。紅葉が終わっているかもしれないという情報を目にするも「まあでも登山できるんデショ?」などと軽く考えていたところ、乗鞍岳、積雪のため10月末で閉山…!!もたもたしている間に、紅葉の美しいシーズンは終わってしまい、雪に閉ざされた乗鞍岳に登ることはかないませんでした。私のおばか…
という訳で、今回は一の瀬草原のみの訪問です。
一の瀬草原へは、松本駅から新島々駅まで電車で移動し、そこからバスで1時間ほど。このバス移動の時点ですでに景観美に圧倒されました。圧倒されすぎて写真を撮りそびれたのですが、切り立った深い渓谷と紅葉が織り成す秋の絶景が車窓に広がります。

バスはビジターセンター前に到着。この時期は乗鞍岳が閉山しているということもあり、人の行き来はまばらでした。それが一層、登山シーズンを逃した悔しさを引き立てます(笑)。週末であればソフトクリームなどが食べられたようですが、オフシーズンの平日なのでお店はお休みでした。
管理官の方と合流し、一の瀬草原をご案内いただきました。
紅葉の盛りは過ぎてしまったということでしたが、秋から冬へ向かう冷たい空気と、葉の落ちた林、重たい雲から射す薄光に、きれいだなあ…とため息が出ました。オフシーズンだからこその静けさがまた凛とした風景の魅力を引き立てているように感じました(負け惜しみではありませんよ!)。

まいめの池まではビジターセンターから車で5分、さらに駐車場から5分。

道中には火山性の岩がゴロゴロしていますが、枯草で足元はふかふかしています。踏み込む感覚が楽しいです。

すぐにまいめの池に到着!晩秋のこの時期、14時半も過ぎるとすでに西日です。本来であれば、記事内の写真のように稜線の向こうに乗鞍岳が望めるのですが、この日はあいにく雲がかかっていて目視はかないませんでした。

遊歩道に敷かれた丸太や、まいめの池に設置されたベンチは、草原維持のために伐採されたシラカバが使われています。資源を無駄にしないことも大切ですね。
ちなみに乗鞍エリアは星空がきれいに見られるスポットとしても有名です。冬季は閉鎖されているようですが、道中には透明なドームの中でお食事をしながら星空観賞ができる!という施設がありました。日常とかけ離れた体験ができそうです!

興味深いスポットが多く、つくづく自分のスケジュール設定の下手さに泣いた今回の取材。せめてこれだけは!と、帰途につく前に「国立公園乃印」をゲットしました♪実は初回の雲仙、第2回の大雪山でもしっかりゲットしています。これを捺すのが毎度の楽しみ。スタンプ制覇をめざして、次回以降も取材を楽しみます!
▶国立公園乃印についてはこちらから
https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/pick-up/stamp/























































