インフォデミックを阻止/情報社会のメンタルヘルス<3>
認知的不協和の状態を認識して
今回はデマや噂に振り回されてしまう人間の心理について。インターネットやSNSの発展により、不正確な情報などが大量に拡散される「インフォデミック」が問題視されています。デマが拡散される心理学的な要因はいくつか指摘されていますが、ここではその中の「認知的不協和」というこころの動きを紹介しましょう。
認知的不協和を簡単にいえば、こころの中に矛盾を抱えた状態のこと。この状態は不快な気持ちを導くので、人はそれを解消しようとします。よく例示されるのがイソップ寓話の「キツネとブドウ」です。キツネが頭上に好物のブドウを見つけます。でも、どんなにジャンプしても届かない。やがて「どうせあのブドウは酸っぱいに違いない」と言ってその場を立ち去るという話。「食べたい」と「食べられない」という矛盾を、酸っぱいから「食べたくない」と解釈を変えて解消するのです。
コロナ禍で自分が感じる不安と、気にせずコロナ前の生活を続ける人たちの姿は矛盾します。その人たちをうらやましく感じる矛盾した気持ちがわく人もいるかもしれません。すると不快感や居心地の悪さが生じてくる。これが認知的不協和の状態です。その解消のため多くの人が求めてしまうのが不安を裏づける証拠です。認知的不協和が強いほど真偽不明な情報も不安を正当化する材料になり得ます。本当はわからないのに酸っぱいと断定したキツネと同じ現象が起きているといえます。
複数あるデマ拡散の心理学的要因のうち認知的不協和は、不適切な情報を受け入れる側に対し、間口を広げさせる働きがあるようです。コロナ禍の不安は増大し、さらに不安をあおる情報が世の中にあふれるという悪循環に陥ってしまう。大量拡散の「インフォデミック」です。
デマの拡散は余計な不安をあおります。こころの中で起きていることを冷静に見つめ、情報は信頼が置ける発信源によるものかを必ず確認し、知らぬ間にデマ拡散に加担してしまわぬよう心がけておきたいものです。
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