生物多様性のしくみを解く 第六の大量絶滅期の淵から
「多様性が必要な理由」を平明に解説
地球温暖化とともに環境問題のキーワードとなっている「生物多様性」。数千万種ともいわれる多様な生き物がつながり合って存在していることを指す。本書は、その生物多様性の成り立ちから、複数の実例に基づく多様性のしくみ、現在の状況、問題点と解決への考え方までを一般読者向けに論じている。
「生物多様性がなぜ大切かを多くの人に納得してもらうには、行きつくところ、多様性はなぜ必要かという論理を分かりやすく伝える以外になさそうである」(200ページ)と述べているように、解説は平明で、すんなり理解できる。
例えば、生物多様性を株取引に見立て、種類の異なる株を複数保有するのがリスク分散になると説く。現実に近い例では、植物が単一種だった場合の解説に人工林をあげる。人工林はスギやヒノキなど一般的に一つの種でつくられる。これを放置しておくと林内に光が届かなくなり、下層植生(下草や低木)が育たず、多様性は失われる。すると、下層植生が担っていた土壌の被覆効果がなくなり土砂災害につながる。
ぼんやり霞んでいた「生物多様性」の輪郭がはっきりしてくるだろう。
工作舎 2,000円+税
宮下 直 著
1961年、長野県飯田市生まれ。伊那谷の豊かな自然に育まれ、子供のころから「生き物博士」と呼ばれた。1985年、東京大学大学院農学系研究科修士課程修了。現在、東京大学大学院農学生命科学研究科、生圏システム学専攻教授(農学博士)。2012年には日本蜘蛛学会会長に就任。日本各地の生態系や生息地のネットワークを科学的に検証し、第六の大量絶滅の危機を回避する方法を探究する。
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