気象観測で人々の生活を守る日本とその役割
以前紹介した『世界気象デーで学ぶ世界気象機関と日本の役割とは』では世界気象機関(WMO)の役割や各国の連携についてシステムを中心に紹介しました。日本国内では気象庁がレーダーや衛星をはじめとするさまざまな機器をつかって雨雲や降水量、風向きなどの気象観測を行っています。そしてその観測対象は天候だけではなく地震や津波、火山の観測も含まれており、各国と情報を共有することで住民の安全や、航空機の安全運航に役立てられています。今回は海洋国家日本にも関係の深い気象観測の国際協力について紹介します。
世界気象デーで学ぶ「世界気象機関と日本の役割」とは
地震・津波監視における日本の役割
日本は世界の陸地の0.3%ほどの広さしかありませんが、複数のプレートの境界に位置し、全世界で起こる地震(M6以上)の20%が日本列島周辺を震源としています。そんな日本には気象庁が運営する「北西太平洋津波情報センター(NWPTAC)」という機関が設置されています。ここでは津波を発生させる可能性のある地震を観測すると、地震や津波に関する一連の情報を周辺各国に通知します。これは太平洋全体における津波防災協力組織のもとでの活動であり、太平洋全体をアメリカが、南シナ海を中国が、そして北西太平洋を日本が監視し、互いに情報を共有することで協力して人々を太平洋全体の地震や津波の脅威から守っています。
迅速な情報共有がわたしたちの命を守る
津波情報は各国間で共有するだけでなく、場合によってはただちに避難できるよう周辺住民へも提供しなくてはいけません。観測域内で大きな地震(M6.5以上)が発生した際は各観測地点のリアルタイム地震観測データから震源と規模を即座に計算。データベースに保存されているシミュレーション結果と照合し、沿岸部への津波到達時刻、および高さを予測します。この予測結果をもとに「北西太平洋津波情報」を作成し関係各国の防災機関に情報提供。その後も観測を続け地震の発生原因の解析とリアルタイムでの津波情報の更新を行い、実際に津波が観測された場合にはその観測値を発表します。
また、気象庁はこの太平洋の枠組みとは別に日本海で発生した津波についても観測し、周辺国に情報提供をしています。地震が発生した際はこうして関係各国で迅速な情報共有と解析をすることで周辺国の人々の避難や防災に役立てられています。
火山活動監視の役割も担っています
日本は火山に関する監視も行っています。これは火山灰による航空機への被害を防ぐためのもので、世界に9ヵ所指名されている「航空路火山灰情報センター」のうちのひとつが東京にあります。ここでは責任領域の東アジア・北太平洋域および北極圏の一部の火山灰の監視を行い、火山噴火を早期に観測、航空路火山灰情報を提供しています。火山灰の動きを予測することは安全で最適な航空機の運航に欠かせません。気象衛星の観測画像や風向き、風速などの予測データから火山灰雲の広がりや高度を予測します。この航空路火山灰情報は気象庁、また航空関係機関を通じ民間の航空会社や気象監視局へ共有されます。
最後に
気象観測と言うと気温や気圧、雨雲といった天候のことを思い浮かべる方が多いと思いますが、世界では各国それぞれが地球全体の幅広い事象を観測しています。台風や大雨、波浪などさまざまなデータを各国が地球規模で観測し、私たちが安全に生活できるよう日夜機能しているのです。そんななかで海に囲まれた島国で活火山を有し、複数のプレートの境界線に位置する日本の役割は重要です。ぜひこの機会にご自身でも調べてみてください。
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