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特集/蓄電池とは――今さら聞けない蓄電池の役割や種類を解説

10月に入り、すっかり秋らしい気候に落ち着いてきましたが、この夏は全国的に記録的な暑さが続きました。9月中旬になっても全国各地で気温35度以上の猛暑日が見られるなど、電力需要も伸長しました。
電気はその性質上、貯めておくことが困難です。電力会社では、利用者の需要に合わせて発電量を調整しながら電気を供給しています。電気は「使う量」と「つくる量」を合わせる「同時同量」が基本となり、このバランスが崩れると周波数が乱れて大規模停電につながってしまうこともあるのです。そうしたなかで、発電した電気を無駄なく利用するため、余剰電力の貯蔵法のひとつとして、蓄電池の活用が広がりをみせています。その背景とともに、蓄電池の概要やその役割、種類についてあらためてまとめました。



【目次】
蓄電池とは
蓄電池拡大の背景と近年の状況
蓄電池の歴史と種類
蓄電池の役割
広がる系統用蓄電池への優遇措置

蓄電池とは

蓄電池とは、電気を蓄える機能をもった装置のことをいいます。太陽光発電などで発電した電気を蓄電池に充電しておき、必要なときにその電気を放電して使うことができます。同時同量が基本となる電気ですが、蓄電池があることで流動的な利用も可能になるのです。身近なものでいうと、一般的な使い切りの乾電池が一次電池と呼ばれるのに対し、蓄電池は二次電池に分類。「充電」「放電」をすることで繰り返し使用することができる電池です。

蓄電池拡大の背景と近年の状況

そもそも日本国内で蓄電池の利用が広まったのは、2011年の東日本大震災以降です。防災への関心の高まりを受け、家庭用蓄電池を中心にその市場規模は拡大しました。またここ数年は再生可能エネルギー(以下、再エネ)の発電設備に併設される系統用蓄電池の活用にも大きな期待が寄せられています(系統用蓄電池については「広がる系統用蓄電池への優遇措置」の段落で後述します)。

記録的な暑さが続いた2024年の夏を例に、蓄電池の活用場面について考えてみましょう。この7月、東京電力エリアにおいて気温上昇にともない電力需給がひっ迫し、中部電力エリアより電力融通を受けました。同様に9月には東北電力エリアで電力不足となり、関西電力などからの電力融通を受けています。ここ数年、エリアをまたいだ電力融通が行われ、その回数は年々増えています。一方で、電力融通ができる量は、全国の各エリアを結ぶ連系線の容量範囲に限られ、容量以上の電力は送電できません。全国的な電力の安定供給体制に向け、現在も地域間連系線の増強などの施策がとられていますが、蓄電池を併用することで、連系線増強と同様の役割を果たすことができるのです。

              拡大する日本国内の定置用蓄電システム
    出典:定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査・三菱総合研究所(2023年2月28日)

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特集/電力融通とは?――夏の電力不足を乗り切る電力融通の仕組み
https://econews.jp/column/sustainable/11960/
(サステナブルノート 2024年8月7日)


蓄電池の歴史と種類

蓄電池が発明されたのは約160年前。1859年にフランス人のガストン・プランテにより世界最初の二次電池として鉛蓄電池が発明されました。その後、約120年前にはスウェーデンのユングナーがニッケル・カドミウム蓄電池を発明。ニカド電池とも呼ばれ、安定した電力を連続で放電できる電池として、家電製品などに広く使われていましたが、カドミウムの有害性などから近年は使用が減っています。その後もさまざまな種類の蓄電池が開発されてきましたが、現在、主に活用されているのは「鉛蓄電池」「ニッケル・水素電池」「リチウムイオン電池」「ナトリウム・硫黄電池」の4種類です。

■鉛蓄電池
最も古くから利用されている蓄電池。安価で比較的長期間使用できるのが特徴で、自動車のバッテリーなどに使用されてきた。大きな容量のものは病院や大規模施設の非常用設備としても使用されている。

■ニッケル・水素電池
ニカド電池に代わり開発されたカドミウムを使わない電池。ハイブリッドカーのバッテリーや鉄道の地上蓄電設備などで広く利用されている。1990年代に普及したノートパソコンや携帯電話、デジカメなど小型電子機器にも使用されてきた。一方で、電力が残っている状態で充電を繰り返すと充電容量が減少する「メモリー効果」が生じるという難点もある。

■リチウムイオン電池
ノートパソコンや携帯電話などモバイル機器に多用されている。500回以上の充放電が可能で、メモリー効果が起きにくい。他の蓄電池に比べ価格が高い。

■ナトリウム・硫黄電池
1967年にアメリカで開発されて以来、実用化に向けて多くの研究が行われてきた。現在は日本で開発された産業用の大型蓄電池が実用化されている。充放電の効率が高く、自己放電がないため効率的に電気の貯蔵が可能。約4,500回の充放電が可能で長期耐久性に優れている。「NAS電池」はナトリウム・硫黄電池のひとつであり、日本ガイシ株式会社の登録商標。

関連コラム

電気をためる蓄電池 非常時の備えにも
https://econews.jp/learn/mijikanadenki/4383/
(身近な電気のあまり知られていない話 2021年8月24日)

蓄電池の役割

災害時の非常用電源として広まりを見せた蓄電池ですが、現在ではこのほかにもさまざまな目的で利用されています。主な役割を下記に見ていきましょう。

■余剰電力を貯めておく
発電量が天候などの自然条件に左右される太陽光や風力などの再エネ電源。再エネの発電量が需要量を超えるとき、使い切れない電気を蓄電池に貯めておき、必要な時に放電して利用することができます。特に住宅用の太陽光発電では、昼間に自宅で発電した電気を蓄電池を利用して夜間に消費する方法も主要な選択肢となっています。

■電力系統の安定を図る
メガソーラー発電所など産業用の大型再エネ発電設備では、発電量の変動により電力系統に大きな負荷をかけてしまいます。そこで、発電設備に見合った大型の蓄電池を併設することで電力系統の安定を図ることが可能になります。また上述のように電力融通という方法もありますが、連系線の容量には上限があるため、蓄電池との並行した活用が効果的です。

■防災に役立てる
国内で蓄電池が拡大した当初の一般的な活用例です。災害や電力不足などで停電が発生した場合、蓄電池に電気を貯めていれば自立的に電気をまかなうことができ、非常用電源として使うことができます。

■デマンドレスポンスに役立てる
「同時同量」が基本となる電力の需給環境のなかで、近年は拡大する再エネの供給量に対応することが求められています。この変化に需要側から対応するのがデマンドレスポンス(以下、DR)です。みんなが一斉に電力を使う時間帯に、蓄電池に貯めておいた電気を使うなどの方法をとることで、電力の需要を抑える「ピークシフト」に役立てられます。

■次世代自動車のエネルギー源として活用
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)など、蓄電池に貯めた電気を使って走る自動車は、次世代での普及・拡大が期待されています。自動車に搭載する蓄電池は、定置型と同様に防災やDRにも活用することが可能です。

広がる系統用蓄電池への優遇措置

最後に、系統用蓄電池について見てみましょう。さまざまな活用場面のある蓄電池ですが、そのなかでも電力系統(発電所から送配電網を通って、全国の利用者に届ける電力システム全体のこと)につないで利用するのが、系統用蓄電池です。大規模な蓄電池を、再エネの発電設備や基幹系統につなぐことで、連系線の容量を超えた電力のやり取りが必要な場合も蓄電池がそのサポートの役割を担い、系統電力の安定を図ることができるのです。
2024年8月、経済産業省では、これまで1社につき1件までに制限していた補助金事業への申請件数の上限拡大を公表しました。また2026年度には、太陽光などの発電を一時的に止める出力制御の仕組みを一部変更し、蓄電池を活用する事業者を出力制御の対象から外す優遇措置を導入することも決まりました。

政府により大きく背中を押され、その活用が期待される系統用蓄電池。また蓄電池市場をけん引してきた家庭用蓄電池。まだまだコストの課題などもありますが、より一層の環境整備が続いていきます。今後のさらなる蓄電池の広がりに注目していきましょう。

【参考資料】
定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査・三菱総合研究所(2023年2月28日)

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