【概観・電気事業法】第7回/広域的運営、あっせん・仲裁

 電気事業法(電事法)の概要を紹介する連載の第7回。前回に続く2章「電気事業」で、残る7節と8節を見ていく。小売や送配電、発電といった分類ごとの規定に続き、電気事業全体を広域的に統括するためのルールと事業者間の紛争解決に対応する制度のそれぞれを定めた条文が記されている。
 これまでと同様、記事作成において参照したのは、政府のサイト「e-Gov法令検索」で施行日を2024年4月1日に設定した電気事業法の条文。
※本記事は環境市場新聞第77号(2024年7月発刊)に掲載されたものです。


広域的な電気事業構築に向けた規定

 2章「電気事業」は、6節までで個別の事業分類における規制などを示したあと、2つの節で全体に及ぶ内容を定めている。事業者や供給区域ごとの枠を越え包括的に電気事業を発展させる狙いを持った7節の「広域的運営」。電力小売りの自由化で活発化する事業者間競争などにおいて、紛争の増加や複雑化が想定されることへの対処として規定される8節の「あっせん及び仲裁」である。


 7節「広域的運営」は28条から34条の2までの条文を6款に分けて構成する。1款は「電気事業者等の相互の協調」。安定供給確保などのため互いの協調を求めるもの。2款は「特定自家用電気工作物設置者の届出」。需給逼迫時に供給を要請できるよう一定の自家用発電設備などを持つものに届出の義務を課す。
 3款はこの節の中心になる「広域的運営推進機関」。1款の相互協調を実現し統括するための広域機関と略される組織について定めている。すべて28条に枝番号が付された4から60までの条文からなり、総則、会員、設立、管理、総会、業務、財務及び会計、監督、雑則の見出しがついた9目に分けて記される。広域機関は、安定供給や需給調整などを目的に設立される唯一の組織で、すべての電気事業者に入会が義務づけられる。目的に従って会員事業者の監視、指示、指導を行い、そこに必要な指針や計画を策定、交付金の処理なども業務に含むといった細かな規定を列挙している。経済産業大臣が監督し、業務上必要な命令も下せると定める。
 4款は「供給計画」。ここでは電気事業者に対し、需要見通しやそれに見合う供給力確保などの計画を年度ごとに作成し届け出る義務を課す。広域機関はこれをまとめ指針や整備計画などに照らして検討する。経産相には届出された供給計画の変更勧告権などを認めている。5款は「災害等への対応」。経産相が下す緊急時の電気事業者への供給命令、燃料調達の方法、一般送配電事業者が共同して作成する「災害時連携計画」の届出義務などを定める。6款は「電気の使用制限等」。供給力不足が危ぶまれるとき経産相が電気の使用制限命令を出せるなどの権限を与えている。
 8節「あっせん及び仲裁」は、送配電網の利用や電力の卸取引に関する事業者間の紛争を公正・中立で簡易な手続きによって処理できるように設けられた規定。紛争の当事者は経産相を経由して電力・ガス取引監視等委員会(のちに解説予定の5章で定めている経産省に置かれた機関)に、あっせんや仲裁を申請できるとしている。




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