【第19回】全社員参加型のサステナブル経営
企業の事業内容に沿ってSDGsの目標達成を考える本コーナー。今回は食品製造・卸売業のSDGsに関する取り組みを紹介する。
1935年創業の東洋美術印刷株式会社(本社・東京都千代田区)。「美術印刷」の名に恥じない美しい印刷を提供してきた自負はある。だがデジタル化が進む社会ニーズの変化など印刷を取り巻く環境は険しい。そんな中で取り組んでいるのが創業100周年を迎える2035年に向けた「Sustainable Act2035」だ。ここにはSDGsが掲げる目標も落とし込んでいる。
「100周年を見据えた全社員参加のサステナビリティ研修を2016年に実施しました。当時からすれば約20年後、そのときの社会や業界の様相を思い描き、そこでどんな事業をどのように行うべきか。その場所にいくためこの20年間どうあるべきか。2日間、全社員で話し合いました」と話すのは執行役員でマーケティング&営業本部統括本部長の丸山博司さんだ。

研修ではまずサステナビリティの基本的な考え方を学び、20年後の未来について意見を交わした。議論は、目指す姿を明確にし、それを実現するための工程を考えるバックキャスティングの方法で進めた。予想する未来社会に自社の事業はどう貢献できるか、そこにどんな変容が必要か。一人ひとりのアイデアが企業の理想像をつくっていく。そして1つの結論を出した。
その答えは経営理念の改定だった。印刷を核に事業を展開してきたが、需要はこの先低迷するという危惧がある。ただ企業マインドを育ててきたのも印刷。過去と未来のバランスを熟考し、経営理念は「印刷を礎とした」の言葉を冠する表現に変えた。そこに続くのは「コミュニケーションサポート事業を通じて、こころふれあう社会の実現に寄与します」だった。
改定した理念とともに具体的目標も設定した。2035年に向けた6つの「サステナブルチャレンジ」である。化石燃料不使用、企業活動の完全循環、多様な人材と多様な働き方の拡充など野心的な指標が並ぶ。これまでの比較的保守的な運営を大胆に変革するという決意を、各目標の数値設定で表している。

執行役員で総務部長の毛利文隆さんは「私は6つの目標設定後に入社しましたが、これを見て本当によい会社だと思いました。目標をより深く高度化させていき、そこから従業員の働きやすさをしっかり担保していきたい」と語る。
自社だけでなく顧客のサステナビリティ実現の支援も行う。顧客の発行する印刷物のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量を算定したり、そこで把握した量を排出権取引によりカーボンオフセットするといったソリューションだ。
2025年は取り組みの中間点。研修後、人事評価にサステナブル項目も加わり、数年間で企業が目指す姿はすっかり社内に浸透した。設定した目標は、社会情勢の変化で一気に達成に近づいた項目もあるが、最も困難なのは100%にする最後のひと踏ん張りだ。それを乗り越えるため、100周年に際し再び全社の英知を結集することになりそうだ。
なお、6つの指標は同社ホームページでも公開中だ。詳細は以下より同社ホームページをご覧いただきたい。
こぼれ話
2016年のサステナビリティ研修では、社員の皆さんが出し合った意見がその場でイラストへまとめられ、今でも社内で大切に保管されています。一部を見せていただきましたが、100周年である「20年後」の世界、会社、業界ではどんな課題が生じているだろう?どんな技術が生まれているだろう?そこで自社は、自分は何をする?のアイデアが事細かに描かれていて、皆さんの先見の明に驚かされました!「在宅ワークが広がっている」「定年がなくなっている」「ペーパレス」などなど、2025年時点ですでに現実化・普及しているものも多く見られました。そんななか、「<社風>みんな元気」というコメントに笑顔のイラストが添えられていて、ああ、素敵な会社なんだろうなあ…と、にっこり、ほっこりしてしまいました。
「ペーパレス」を社員の皆さんも予想されている通り、紙媒体が減りデジタル媒体が増えていく世の中。いろいろなお客さま先でお話を聞いていると、印刷業に携わる方々の試行錯誤には脱帽するばかりですが、東洋美術印刷さんは「印刷を核とした」から「印刷を礎とした」に企業理念を変更してしまうのだから、柔軟すぎて脱帽どころではありません。環境に合わせて変化していけるものだけが生き残れる、というダーウィンの進化論を思い出しました。この柔軟さ、見習います…!!


社会、業界、自社の現在地と未来像がまとめられたアウトプットイラスト























































