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  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

自分の夢は大好きになれ!Scene 18


 2013年10月、宮城県石巻市立青葉中学校に合唱特別講座のボランティア講師として、日本テクノのイメージキャラクターである河村隆一さんが招かれた。
今も3割の生徒が仮設住宅から通学する。生徒の被害では最大となった学校だ。「昨年まで決して良い状態ではなかった」と校長の中塩栄一さんは話す。ようやく今年になって剣道や陸上競技で優秀な成績が出始め、生徒が前を向きだした。 このタイミングで学級を一つにする合唱の授業を開き、「本物の音楽家に高いレベルでの評価とアドバイスをもらい、より確実な前進につなげたい」とこの特別講座が企画された。

プロの音楽家が被災地の生徒へぶつけた熱誠の助言

生徒に囲まれ記念写真を撮る河村さん。

 学校を訪れる前、河村さんは、被災者である生徒たちに同情する気持ちが心を占めていたという。だが、実際の生徒たちを前にしたとき、中途半端なお世辞はやめ、プロとして率直なアドバイスをしようと思った。生徒の真剣に取り組む姿に心を打たれたからだ。
 前半の場所は教室。各クラスが順番に、河村さんの前で課題曲と自由曲を合唱。それに対しアドバイスを与える。「伸ばす音の最後が消えている」「ロングトーンの練習では最後の4小節にビブラートを効かせて」「ビブラートの効果をきちっとイメージできるように」。指揮者がオーケストラ演奏者に向けるような熱誠の助言が飛んだ。

全8クラスの合唱を終え、後半は体育館での講演。「歌と人生」をテーマに自らの半生を飾らぬ言葉でぶつけた。勉強については「好きなことには100%の力が発揮できる。だから好きなことを見つけよう。好きなことを続け、さらに高い位置まで行くには、基礎知識の習得という勉強が必要なんだ」と説いた。 さらに「自分を無理に好きにならなくてもいい、でも自分の夢は大好きになってほしい」と締めた。最後に予定になかった河村さんの代表曲「Love is…」がアカペラで歌われると、会場にいた全員が聴き入り、感動に身をゆだねていた。

こぼれ話

訪問したときに、校舎に垂れ幕が何本もかかっていました。多くの競技で優秀な成績が収められている学校だなと、被災地であることを忘れて見つめていました。実際の授業でも生徒や先生も元気いっぱいでした。中に河村さんを前にして緊張をしている生徒もいましたが、自分たちの音楽を聴いてもらおうと必死なことが伝わってきました。 その姿に同行者全員が感動し、その感動に応えるために、私も歌いますと何もない状態で歌い始めてしまった河村さんの気持ちは、講堂にいた全員に伝わったと思います。
講演は一般にも公開され、見学に来られたお母さんたちの熱狂が収まりませんでした。終了時間になっても、サインと握手を求める様子を生徒(子どもたち)が「引くわ」って感じで眺めていた光景が微笑ましかったです。

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