2050年カーボンニュートラルに法的根拠

改正地球温暖化対策推進法成立

 国民および国、自治体、企業、民間団体が取り組む気候変動の緩和策などを定めた改正地球温暖化対策推進法(改正温対法)が2021年5月、国会で可決、成立した。2020年10月に宣言した「2050年カーボンニュートラル」の目標が明記される形となり、期限が示された脱炭素社会への取り組みが法的根拠を持った。

 温対法が最初に成立したのは1998年。その前年に地球温暖化対策の世界的枠組み「京都議定書」が採択されたことを受け国内のルールが定められた。以来、議定書の発効や約束期間の終了に伴う新たな対策計画の策定などを機に改正が重ねられていった。今回は「2050年カーボンニュートラル」の宣言を受け、それを明文化する狙いがあった。法に定めることで政権が代わっても取り組みを継続的に進める姿勢が国内外に示された。
 2050年までの脱炭素社会実現の目標は「基本理念」として条文に加えた。産業革命以降の世界の平均気温の上昇を2℃(できる限り1.5℃)に抑えるパリ協定を踏まえることや、環境保全と経済発展を統合的に進めることも盛り込んだ。
 温室効果ガスの排出削減に欠かせない再生可能エネルギー(再エネ)の導入を促進させる仕組みも追加した。これまで自治体の温暖化対策には再エネの導入目標までは求めていなかったが、それを計画に加えるよう定めた。再エネ発電事業者が自治体の認定を受けることで各種許可手続きをワンストップで受けられるなどの特例も設けている。
 一定規模の企業に報告が義務づけられている温室効果ガス排出量の算定報告公表制度も見直した。脱炭素経営に取り組む企業が有利になるESG投資※の進展に対応した措置だ。排出量の情報をデジタル化し、投資家などが容易にアクセスできるようオープンデータ化を進める。具体的には紙媒体が中心だった国への報告を原則電子システムによるものとし、国はこれを速やかに公表する。企業単位ではなく事業所単位の情報はこれまで開示請求が必要だったがそれを廃止し、すべて閲覧できるよう国の公表情報に含める。
 改正温対法の公布は2021年6月で、1年以内に施行される。


ESG投資
 環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの要素を重視して行う投資の手法。「ESG」は、それぞれの頭文字をとった略語。環境は地球温暖化対策、社会は人権への対応、企業統治は法令順守といった事項を確認し、これまでの財務指標では隠れていた情報を評価して投資対象を選ぶ。
 ESGに配慮した企業は、持続的成長や中長期的収益をもたらすとの考えに基づいている。

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