野菜を育てるだけじゃない!都市農業のさまざまな役割
まちなかを歩いていて「こんなところに畑がある」と思ったことはないでしょうか。ビルや住宅に囲まれた農地でどんな農業が営まれており、どんな役割をもっているのかを考える機会は少ないかと思います。こうした都市で行われている農業は「都市農業」と呼ばれています。たとえばスーパーマーケットで見かける水耕栽培のレタスやパセリ、サラダ菜などは都市農業で手掛けられることが多いものです。
都市農業とは、大都市の市街地区画内で農業をし、食物を生産・流通させること。特徴としては消費者に近いという利点を生かした新鮮な農作物の供給ができる点や、都市住民の生活と密接にかかわるさまざまな機能をもつことがあげられます。11月2日には「都市農業の日」という記念日も制定され、都市に農地があるすばらしさや農地と触れ合うよろこびを分かち合い、都市農業をさらに盛り上げることをめざしています。
国連によると2050年までに世界人口は90億人にもなるといわれています。そのうえ、その大半が都市部に集中すると予測されているのです。都市農業なら限られたスペースを最大限に生かし、多品目を少量栽培することで都市に住む消費者のニーズに合った作物を提供し、効率よく、持続可能な農業を継続して営むことができるのではないかと期待されています。
都市農業のさまざまな役割:6つの機能
ここで、先述した都市農業のもつさまざまな機能についてご紹介します。
- 景観創出・・・まちなかに一定の広がりのある緑の空間を生み出す農地が緑とやすらぎのある景観をつくり出す。
- 交流創出・・・農業体験の場を提供し、地域の住民や農家との交流をうみ、コミュニティ形成の場をつくる。
- 食育・教育・・・自然との触れ合いの少ない都市部で、農業体験の場や地域産の農産物を提供し、農業や食を学び理解を深める機会をつくる。
- 地産地消・・・地域産の新鮮で安全・安心な農産物を都市に供給する。
- 環境保全・・・
●農地の緑地や水面がヒートアイランド現象を緩和し、気温を下げる。
●都市農地の土壌が雨などの栄養分を吸着したり分解したりすることで、川や海に栄養分が多量に流れ込むことを防ぎ、赤潮などの発生を防ぐ。
●都市部の貴重な緑地空間である都市農地が鳥や昆虫などの生き物のすみかとなることで、生物多様性を保全する。
6. 防災・・・
●農地は災害時に避難場所となったり、炊き出しや物資供給を行う災害支援拠点となる。
仮設住宅用地や復旧用の資材置き場などとしての活躍も期待される。
●食料や水が深刻に不足することが予想される都市部の災害時に、農産物や井戸水を提供すること
が期待される。
●火災発生時に周囲への延焼を防ぐ緩衝地帯となる。
●豪雨時の洪水を緩和する。雨水が浸透しづらいアスファルト舗装などが多い都市部では、農地に
雨水を貯留することで洪水の発生を防ぐ効果が期待される。
こうした多面的な機能を備える都市農業の働きが発展すれば、都市に住むうえでおこるさまざまな問題解決の一助となります。少子高齢化が進むなか、新たな開発よりも地域のコミュニティづくりに力を入れることが市民生活の支えになるという意見も出ています。
関連コラムはこちら
森林の減少に歯止めをかけろ!宮脇方式という植樹方法
https://econews.jp/column/ecobooks/1142/
(省エネの達人『企業編』掲載 省エネコラム)
【第106回】 暮らしの基本「食」を知る 食育ってなに?
https://eco-tatsujin.jp/column/vol106_r.html
(省エネの達人『企業編』掲載 省エネコラム)
コミュニティ農園が地域の活性化につながる
東京都下の住宅街に広がるとある農園では、だれでも気軽に農業体験ができます。この地はもともと水田地帯だったため、今でも農業用水が流れ、ザリガニやドジョウ、メダカ、カエルなどの生き物たちが数多く見られます。人気があるのは田んぼ体験。田植えから稲刈り、収穫 まで参加することができ、水路での生き物探しや、収穫祭でのお餅つきなど、農村らしい体験を楽しむことができます。
また、企業や団体向けの貸農園もあります。コミュニティ活動の場として利用されており、畑を借りている団体ごとに勉強会や懇親会が毎週開催されています。
ほかにも親子が集まって畑作業をしてお弁当を食べるピクニックのような会もあります。大人も子どもも農業を楽しんで学べるコミュニティ農園が地域で活用されています。
関連コラムはこちら
指標生物・トンボに学ぶ自然環境の動向
https://econews.jp/column/sustainable/7325/
(サステナブルノート)
都市農業の新しいかたち
一方、先進的な技術を駆使した新しいスタイルの都市農業も展開されています。
- 持続可能な「食」と「農」をめざして
IoTとAIを活用した最先端の都市農園を運営する企業では、都内の都市に点在するオフィスビルやマンション、商業施設などの屋上にIoT機能をもつ農園をつくり、テクノロジーの力を借りながら参加者で協力して野菜を育てる、シェア型の都市農業を行っています。参加者はビル内のオフィスで働くワーカーや、飲食店のシェフ、近隣住民など幅広く、仕事の合間などに気軽な農体験ができると人気です。 - スーパーマーケットの店内で新鮮野菜を栽培
とあるスーパーマーケットでは、野菜売場のそばにLEDを使った小型の水耕栽培装置を設置し、バジルやパクチー、ルッコラなどを育て、販売しています。ガラス張りのため、野菜が育っていく様子が見え、消費者が楽しんで買い物ができると評判のようです。
関連コラムはこちら
みんなで食べる幸せを10月16日は世界食料デー
htpps://econews.jp/column/sustainable/10051/
(サステナブルノート)
おわりに
都市農業は農業と多様な機能を合わせもっています。「農産物の生産」を主軸に据えた最先端の取り組みは新しいコミュニティ、さらには新しいまちづくりへとつながる可能性をもっています。近くの農地で開催されているイベントや、直売所などを訪れ、地元の農業を知ることで新しい発見があるかもしれません。
関連動画
自然に寄り添う宿をめざして省エネを実践する会社はこちら
【第359回】旅館紅鮎
電気に関する総合サービスを提供する日本テクノの広報室です。エコな情報発信中。