至福の1杯を飲むために、環境にやさしいビールについて考えよう!
ビールがおいしいこの季節。汗をかいた後や仕事帰りに飲むビールは格別ですね!泡が弾けると日頃の悩みやストレスも弾け飛ぶようです。そんな身近なビールが、地球温暖化の影響で将来高級品になってしまう恐れがあるそうです。これからもビールをおいしく楽しめるよう、つくり手はどのような対策をしているのでしょうか。そしてわたしたち消費者にできることとは。ビールにまつわる環境への取り組みをご紹介します。
地球温暖化が進むとビールが飲めなくなる!?
皆さんはビールがどうやってできるのかご存知でしょうか。ビールづくりに必要なのは、大麦からできる「麦芽(モルト)」と、アサ科のつる性の多年草植物である「ホップ」、そして「酵母」、「水」の4つ。麦芽由来の成分が発酵することにより、炭酸ガスとともにアルコールが生まれます。そこにくわえたホップの成分がビールの苦味と香りを生み出すことで、ビール独特の味わいが誕生します。大麦はビールにとって欠かせない原料なのです。そんな大麦が地球温暖化によって減少してしまうといわれています。
地球温暖化は生態系や私たちの生活にさまざまな影響を及ぼします。そのなかの1つ、猛暑と干ばつが大麦の生産を大幅に減少させる恐れがあるのです。多くの農家では干ばつに耐える作物づくりや、深刻な水不足への備えなどに取り組んでいますが、大麦は、家畜の餌に欠かせない作物であるため、優先的にそちらに回すことになります。それがビールの生産量に影響するのです。そのため、21世紀末にはビールの価格は大きく値上がりし、各国平均2倍から3倍、国によっては5倍にもなる可能性があります。
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ビール業界の環境への取り組み
ビールの製造工程では発酵や排水処理など、さまざまな工程においてほかの食料品と同じように二酸化炭素(以下、CO2)が排出されます。これは製造業全体の問題であり、各社が温暖化対策を進めています。ここで大手ビールメーカーと小規模なブルワリー(醸造所)の取り組み事例をご紹介します。
〇「CO2循環型製造所」の運用
海外のとある大手ビールメーカーでは、ビールの発酵工程で発生するCO2を回収し、ビールの炭酸として再利用しています。ほかにも、樽や容器を加圧するときなどにも回収したCO2を使っています。こうしてメーカーから出るCO2の96%を回収し、有効利用しているのです。まさに「CO2循環型製造所」といえますね。同社はCO2の循環だけでなく、削減にも意欲的な姿勢を見せています。2018年以降、製造にともなうCO2排出量を28%削減しており、2030年までにはゼロエミッションを実現するという目標を掲げています。
〇廃棄されるパンからビールをつくる
廃棄されるパンを原料とするクラフトビールづくりが世界各地のブルワリーで行われています。パンをペースト状にして麦芽と混ぜ、麦芽の酵素がでんぷんを糖に変えることで、ビールのもとができるのです。本来使われる麦芽の20%をパンで代用し、3週間ほど熟成させるとビールのできあがり!この仕組みを応用して、災害備蓄用のアルファ米やラーメンの麺の切れ端を使ったビールも開発されています。
さらに、「廃棄パン」からビールをつくるアップサイクルの取り組みは、SDGsにも貢献します。
【本取り組みが果たすSDGsの目標】 目標7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに ⇒廃棄予定の食品を新たな原材料に活用することで、食品をつくる工程で発生したエネルギーをムダにしない 目標12 つくる責任つかう責任 ⇒フードロス削減を果たす 目標13 気候変動に具体的な対策を ⇒パンの焼却などの廃棄にかかるエネルギーも必要がないので、温室効果ガスの削減につながる |
このように環境負荷の低いビールづくりに各社が知恵を絞っています。
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ビールづくりの工程とCO2排出量
ここで、ビールづくりの工程ごとのCO2排出量の割合を見てみましょう。
【原料】麦芽やホップなどの原料栽培・加工・輸送など 22% 【製造】醸造所での製造など 9% 【容器】瓶や缶といった容器の製造・輸送・リサイクル・廃棄など 40% 【流通】できあがった商品の輸送など 7% 【小売】自宅保管:販売店や自宅での冷蔵など 18% 【廃棄】廃棄商品の処分など 4% |
もっともCO2を排出するのは製造工程ではなく、「容器部門」です。アルミ缶の原料となる「ボーキサイト」や瓶の元となる「珪砂(けいしゃ)」といった資源の発掘・輸送・容器製造・リサイクル・廃棄など一連の工程でCO2が排出されます。
なお容器の種類ごとのCO2排出量は以下のような順になります。
「ワンウェイ瓶(※1)」>「缶」>「リターナブル瓶(※2)」>「ケグ(※3)」 ・「ワンウェイ瓶(※1)」:回収・洗浄・再利用はされずに、1度しか使われない瓶 ・「リターナブル瓶(※2)」:ビールが消費されたあとに、回収・洗浄されて再度ビールを入れて販売される瓶 ・「ケグ(※3)」:ビールの貯蔵・輸送やサーバーとして使われる容器 |
国内の大手ビールメーカー5社の瓶ビールはリターナブル瓶で流通しています。回収〜再利用の仕組みが確立しているのです。一方、小さなブルワリーではその仕組みが確立していないところが多いので、主にワンウェイ瓶で流通しています。何度も繰り返し使用されるリターナブル瓶は、原料や製造にともなうエネルギーを削減することができるため、1回だけ使われるワンウェイ瓶に比べて環境にやさしい容器です。回収率が高いほど、使用回数が多いほど、環境負荷は低くなります。
CO2排出量の全体に占める割合が大きいからこそ、容器部門のCO2削減が果たす役割も大きいといえます。
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容器に着目したビール消費
消費者の立場からも容器部門のCO2削減のためにできることがあります。たとえばクラフトビールの醸造所のなかにあるスタンドや飲食店でドラフトビールを飲むこと。前述したように、回収・洗浄され何度も再利用されるケグは、環境負荷がもっとも小さい容器です。お店によってはグラウラー(※ビールや炭酸飲料を入れるマイボトル)にビールを入れてテイクアウトすることもできます。普段はなじみのないことかも知れませんが、この先もおいしいビールが身近な存在であるよう、環境にやさしい1杯について考えてみてくださいね。
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