サステナブルノート

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世界からミツバチがいなくなったら…食糧生産が立ち行かなくなる⁉|5月20日は「世界ミツバチの日」



5月20日は国連が制定する「世界ミツバチの日」。ミツバチの重要性を認識し、考えるための日です。ミツバチと聞いてすぐに連想できるものは「蜂蜜」ではないでしょうか。それだけを考えると、国連が国際デーを制定してまで保護を図る必要があるのだろうかと疑問をもつかもしれませんが、ミツバチの役割は蜂蜜をつくるだけに留まりません。ミツバチは植物の花粉を運び受粉させる生き物で、「ポリネーター」と呼ばれます(花粉媒介者、送粉者という呼び名もあります)。このポリネーターとしての働きが私たちの食糧事情にとっても極めて重要。一説にはミツバチは世界の農作物の90%に関与しており、食糧生産の1/3はミツバチの働きに依存しているといわれるほどです。
今回は、食糧生産においてなぜそこまでミツバチが重要なのか、ミツバチがいないとどうなるのか、そして保護に向けた取り組みや個人でできることについて紹介します。


ポリネーターとは?

私たちの食卓に並ぶ野菜や果物は農家により生産され流通、消費者の手に届けられますが、その植物が「実」や「種」をつくるには「花粉が受粉する」という工程が必要です。ただ、多くの植物は自身で受粉することができません。そこで重要な役割を果たすのがポリネーター。ミツバチ(ハナバチ類)が代表的ですが、そのほかの昆虫(チョウやガ、アブなど)、または鳥類(ハチドリ)やコウモリなども挙げられます。一部の植物ではサルやトカゲもポリネーターになり得ます。
ポリネーターは自身の生活の過程で花から花へ花粉を運びますが、特にハナバチ類は後述するように送粉に適応した特徴をもっていて、大部分の種子植物の受粉に関与しているといわれています。なかでもミツバチは花の選り好みがなく管理がしやすいため養蜂家に好まれ、世界の農業を支えています。


ミツバチはさまざまな花を飛び回り、蜜(エネルギー源)と花粉(タンパク源)を集めます。体が毛で覆われ帯電しているため花粉が付着しやすく、また後ろ足に花粉ブラシや花粉籠と呼ばれる構造をもっていて一度にたくさんの花粉を運ぶことができます。ミツバチが蜜や花粉を集めるのは自身や巣で待つ仲間・幼虫のためですが、集めて移動する過程で花々の受粉が行われるのです。自身の生命をつなぎ、他種の再生産に関わる。まさに生態系の重要な一角ですね。

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農業におけるミツバチの役割


受粉の役割は農業においても必要不可欠なもの。野性のミツバチが自然と花粉を運ぶほか、養蜂家が受粉用に飼育してもいます。特にイチゴやスイカ、メロンといった果物ではミツバチによる受粉が欠かせません。イチゴ狩りに行ったときなど、ハウス内に蜂の巣箱が置かれているのを目する機会がありますが、それも実を付けるために用意されたものです。「蜂がいるなんて、危険!」と思われるかもしれませんが、ミツバチは温厚な性格のため、人間を攻撃してくることはほとんどありません。ただし、巣箱に刺激を与えると敵と認識されてしまいます。仕事中のミツバチたちにはいたずらをしないようにしましょう。

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ミツバチがいないとどうなる?


ミツバチの数は、農薬や自然環境の変化などの影響により減少傾向にあります。特にアメリカでは2006年頃から「蜂群崩壊症候群」と呼ばれる現象が起こっており、ミツバチが大量に失踪、年間30%以上の減少が確認された年もあるほどです。ダニやウイルス感染、農薬などが原因として考えられていますが、はっきりとは特定されていません。ミツバチによる受粉に頼れなくなった場合、農作物の生産を続けるには人の手で「人工授粉」を行わなければなりません。ミツバチを介するよりも圧倒的に時間も費用もかかることから、このままのペースでミツバチの減少が続いた場合、農業に深刻なダメージを及ぼすことが懸念されます。農作物の供給不足、値段の高騰はもちろん、家畜の飼料にも影響し食肉の供給も不安定になる可能性が。生態系の根幹である植物が脅かされると、影響範囲はすべての生物に及びます。「世界ミツバチの日」が制定された背景には、このような理由があるのです。

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保護に向けた取り組みと私たちにできること


そんなミツバチの保護のため、日本では農林水産省はもちろん、さまざまな団体や企業が活動しています。そもそもミツバチの生息環境の保護・改善のためには、農薬被害の防止や巣の保護といった取り組みが行われていますが、これまでにお伝えしたミツバチの重要性を、ワークショップやボランティア活動、または商品購入などを通じて「知ってもらう」活動も行なわれています。有害な農薬を使わずに生産される蜂蜜を選んで購入する、養蜂家に公正な報酬が支払われているフェアトレード商品を購入するといった行動を消費者が取れるよう、きちんとPRすることは重要ですね。
自宅でもできることはあります。そればずばり、「植物を植えること」!開発により緑が減少していることもミツバチが減っている要因のひとつです。休憩所となる植物が街中に増えることも、ミツバチの保護につながります。できることなら地域に自生している植物がベストですが、ハーブ類(ラベンダー、ローズマリーなど)は育てやすく初心者にもおすすめです。
小さな存在ですが、欠かすことのできない縁の下の力持ち、ミツバチ。「世界ミツバチの日」のほかにも、日本では3月8日の「ミツバチの日」、8月3日「はちみつの日」があります。さまざまな企業や団体などでイベントが開催されたり関連商品が発売されたりしますので、ぜひ目を向けてみてくださいね。

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