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  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

広田湾の海の幸で商品を作ってこそ真の復興ですScene 31

 株式会社あんしん生活の前身は、地域に多くいた健康な高齢者に惣菜加工などの働き口を提供するNPO法人であった。 「当時はある食品加工会社の下請けでしたが、震災でその会社が被災、廃業し、私もNPOを続けていくのは困難だと考えました。しかし、同じく被災した別の会社の社長から”生き残れた私たちが今度は陸前高田の為に頑張ろう。復興に貢献しよう”と熱心に説得され、一度諦めかけた事業に取り組むことを決めたのです」(津田信子社長)

地域の雇用創出と産業活性化の旗振り役へ

津田信子社長と津田勇輝部長

 「震災当時、隣の気仙沼市で福祉の仕事に携わっていました。地震の後、陸前高田の前途を悲観し、町を離れる同年代の人が多くいることに胸を痛めていました。大変なことだと思いながらも私も故郷に戻り、復興の一助を担いたいと決心し、現在の仕事に就きました」(企画部部長の津田勇輝氏)

 同社の再建は陸前高田食品加工組合の一員として新工場を建設することから始まった。資金調達から材料の仕入、販路の開拓に職員の採用と、やるべきことは多い。2人とも本格的な会社経営は初めてであり、幾度も壁にぶつかっては乗り越えてきた。 「現在は都市圏の生活協同組合など、品質基準の厳しいお客様の要望にお応えすることで、信頼をいただきながら、徐々に売上を伸ばしているところです。主な商品は三陸産のオキアミやワカメをふんだんに使ったかき揚げ、鮭のフライなどレンジで加熱調理できる油調商品です。消費者の皆様が安心して美味しく食べられることを念頭に、できる限り品質にこだわっています。今後も丁寧に一つずつ手揚げすることで、素材の良さを引き出した味わい深い商品を追求していきます」(津田部長)

かき揚げは人の手で一つひとつ揚げるから、
火の通りにムラのない、美味しいかき揚げができる

 同社の眼前には、震災前は観光地・高田の松原として知られ、カキやワカメの養殖が盛んだった広田湾が広がる。「奇跡の一本松」は工場から数百メートルの場所だ。同社が考える真の復興は、三陸全体が震災前のように豊かな海に戻り、そこで取れた海産物を商品化し、全国の消費者に届けられたときだ。
 会社のロゴにはイカ、ワカメなど三陸の海の幸をちりばめた。復興に向けた同社の強い思いはそのロゴに込められている。

株式会社あんしん生活の外観。壁にあるロゴは海産物をちりばめたデザイン

こぼれ話

 現在、陸前高田は町全体でかさ上げの真っ最中です。取材時もダンプカーがひっきりなしに通り、土ぼこりを巻き上げていました。津田部長は「品質はいいからとにかく安く、という要望も時にありますが、それに応えていては私たちの将来はないので、品質を高めて単価を上げていきます」と話してくださいました。こだわりのかき揚げは生活クラブさんなどで入手可能です(2017年4月現在)。

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