環境教育の現場から

全国各地の環境教育授業の様子をレポート。地域の特色を活かし地元住民と協力しながら進める授業や、企業が出張して行う出前授業などユニークな取り組みを紹介

Vol.5 海辺の自然再興は自分たちの行動から/岩手県立大学総合政策学部

岩手県立大学総合政策学部には、「社会問題の解決」をテーマに、社会・人文科学から自然科学まで幅広いコースがある。学生一人ひとりが関心ある分野を専門領域として学び、多面的なアプローチで社会問題の解決に取り組んでいく。
地域社会・環境コースの島田ゼミでは、海辺の植物や海ごみを題材にして、小学生に向けた環境教育を展開する。そこで子どもたちが利用するのがカードゲーム「みんなのうみべ」だ。使用するカードは海ごみ、アクション、生き物の3種類。アクションカードにある「海ごみ拾い」「ごみを出さない生活」などの行動には、カードごとに「がんばりポイント」が設定されている。授業ではこのゲームを2回繰り返す。まず1回目のゲームでは「がんばりポイント」は合計3までしか使えない。すると海ごみが減らず、生き物が増えない。ゲームが終わった後にみんなでこの状況を確認し、どうしたら海ごみを減らし、生き物を増やせるのかを考え「がんばりを増やせばいい!」という答えが出た。2回目のゲームでは「がんばりポイント」を5に増やし、再度プレイ。1回目より海ごみが減り、生き物が増える。つまり、「がんばり」が重要であることを実感できるゲームだ。

ゲームボード上に置く海ごみは、実際に地元の海辺で拾ったものをきれいに洗って使用している。

震災をきっかけにゲームを通じた環境教育

担当教員の島田直明さんは「ゲームはゼミ生の手づくり。きっかけは東日本大震災の津波にさかのぼります」と話す。当時、津波の影響で大学のある岩手県の海辺は植物の姿がほとんど消えた。調査すると、砂浜が残っていれば植物の多くは再生できそうだとわかった。そこで地元の小学校と協働で、生き残った植物の保全に取り組むことを決めた。「海浜植物再生授業」と題して、春に種をまき、秋に育てた植物を移植する。数年にわたり授業を続けると、海辺の自然は次第に回復していった。そこでその活動には区切りをつけ、新たに「地域の海岸を知る環境教育」をスタートさせた。
内容は1年間を通したカリキュラム。初夏、子どもたちは地元の海辺に出向いて植物の観察を行い、その内容をポスターにして掲示・発信する。秋には海辺のごみ拾い。ペットボトルや空き缶、お菓子の袋など、ごみを分類するとその多くが「自分たちの生活から出るごみ」であると気づく。

「みんなのうみべ」で使う、海ごみ、アクション、生き物の3種類のカード。流れ着くごみを環境アクションで減らし、
多くの生き物が暮らせる海辺の自然を再生させるという流れをゲームにしている。

そして冬には、これまで学んだことをカードゲーム「みんなのうみべ」で復習する。ゲームを通じ自分たちの行動で海ごみが減り、生き物が増えることに楽しさを感じ、さらに海を守るために何ができるのかを考えていく。ゲーム一式はその後も楽しめるよう、子どもたちに贈呈する。カードに記す植物は近隣の海辺に生育する種にしているため、学校ごとに内容は違う。そうした心配りも子どもたちが自然環境をより身近に感じる助けになっているようだ。
島田さんは「次は海辺だけでなく、奥山・里山・市街地など地域全体で活用できるカードゲームを考えて、環境への関心をさらに高めていきたいですね」と話す。

こぼれ話

今回、環境市場新聞で紹介させていただいたカードゲーム「みんなのうみべ」を初めて拝見したのは、2025年12月に東京ビッグサイトで開催された総合展示会「エコプロ」の会場でした。エコプロは日本最大級の環境に関する展示会で、多くの企業や団体が最新の技術や取り組みを紹介しています。岩手県立大学をはじめ、環境教育に取り組む全国の教育機関も多く出展しており、日本テクノも毎年出展しています。
同校のブースでは「みんなのうみべ」を実際に展示し、来場者がその場でゲームを楽しむことができるようになっていました。紙面でも紹介したように本ゲームは海辺で拾ったペットボトルの蓋や陶器の破片などの海ゴミをそのまま使用します。また「生き物カード」に載っているハマヒルガオやコウボウムギなど植物の写真も岩手県内の海辺で撮影したもの。植物の特徴のほか、名前の由来なども紹介されており、本当に丁寧に手作りされたことが伝わってくるものでした。

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