展望・課題 最新エネルギー市場

世界と日本のエネルギー市場について解説する識者コラム。寄稿は常葉大学の山本隆三名誉教授です。

米国を揺るがすエネルギー価格の動向

 米国で4年ごとの大統領選の間に実施される中間選挙が今年11月3日に実施されます。下院の全435議席と上院100議席のうち約3分の1(今回は35議席)、それに39州の知事選が行われます。選挙の大きな焦点はアフォーダビリティ(支払いが可能な価格の意味です)とメディアは伝えています。アフォーダビリティに大きく関わるのが米国の家庭で支出の多いガソリン価格と電気料金です。
 米国の世帯平均年収は12万1000ドル(約1900万円)。日本の575万円の3倍を超えますが多くの世帯が物価上昇に悩むのは日本と変わりません。公共交通機関が大都市以外では発達していない米国の家庭の自動車保有台数は日本の約2倍、1台当たり走行距離も2倍を超えます。平均170平方メートルの大きい住宅を持つ家庭の電力消費量は日本の約2.5倍です。ガソリンも電気も日本より安いことが消費量に影響しているかもしれません。
 2000年頃までガソリン価格は1ドル台でした。1ガロン(3.8リットル)当たりの価格なので1リットルでは数十円程度でした。今年初めの価格は約3ドルでしたが、イラン戦争による原油価格の上昇を受け4ドルを超えました。8月中旬時点で原油価格はピーク時より下がっていますが、米国のガソリン価格は依然4ドルを超えています。原油価格が下がってもガソリン価格が下がらないのはウクライナの攻撃によりロシアの精油設備が大きな損傷を受けたため、石油製品の供給がタイトになっているからと思われます。
 米国の平均的な家庭のガソリンへの支出は年間2000ドル程度まで増えていると推測されます。日本の家庭の支出は10万円弱とされるので、日本の3倍を超えます。ガソリン価格の上昇に不満を持つ消費者は多く、トランプ大統領の経済政策への支持は3割まで下がりました。イラン戦争の行方、原油と石油製品価格の先行きは不透明です。
 電気料金の上昇も消費者を悩ませています。全米平均の家庭用電気料金は2024年5月1キロワット時当たり16.40セントでしたが、昨年5月に17.37セント、今年5月18.44セントと消費者物価を上回る年率6%で上昇しています。値上がりには燃料価格などさまざまな要因がありますが、今後データセンターの新設により電力需要が大きく増え、電気料金はさらに上昇すると予想されています。仮にデータセンター事業者が発電設備を手当てしても、例えば送電設備の増設は全消費者の負担になります。
 トランプ政権はデータセンター事業者に全電源を自前で手当てするよう要請していますが、実現するかわかりません。有権者の7割が電気料金の値上がりを懸念しデータセンター新設に反対しています。中間選挙を控えアフォーダビリティを掲げる州知事や議員はデータセンター新設に反対する動きを活発にしています。選挙が終われば風向きが変わるのでしょうか。

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