COP28がまもなく開催!今回の論点「グローバル・ストックテイク」とは?
11月30日から12月12日の日程で国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)が開催されます。今回の議長国はアラブ首長国連邦(UAE)。開催地は首都ドバイです。1992年以降毎年開催されており、温室効果ガスの排出削減に向けて197の国と地域が話し合う場としてこれまで重要な国際的目標などが採択されてきました。世界中の国々が参加することで、各国の経済、環境、情勢が複雑に絡み合い、意思決定には難しい舵取りが迫られます。
今年のCOP28ではどのようなことが話し合われるのでしょうか。昨年のCOP27を振り返るとともに、今回の最大の論点であるとされる「グローバル・ストックテイク」を中心に解説します。
COP27に関する記事はこちら
COP27が開催中!気候変動に対する最新の議論に注目
https://econews.jp/column/ecobooks/1142/
(サステナブルノート 2022年11月7日)
COP27の振り返り
前回COP27はエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されました。主な結果は以下の4点です。
1) シャルム・エル・シェイク実施計画
2023年末までにパリ協定の1.5℃目標が達成できるような各国削減目標の見直し・強化を求める
2) 緩和作業計画
2030年までの対策実施の緊急性を高めるため、国別目標(NDC)を強化する
3) ロス&ダメージ基金
気候変動の影響に特に脆弱な国に対し、資金面での支援を講じる
4) 気候資金
年間1000億ドルを目標とする途上国支援資金(COP16で決定)について進捗報告書を作成する
特に「ロス&ダメージ」については、これまでのCOPでも途上国が長年にわたって要求し続けてきた課題(経済発展のために先進国が温室効果ガスを大量に排出してきたことによる気候変動で、排出量の少ない途上国が大きな被害を受けている問題)です。議論は平行線をたどっていましたが、COP27でついに設置が決まりました。近年の気候変動による危機が世界中で具現化し始め、先進国にとっても自分事になってきたことも決定に大きな影響を与えたものと思われます。
誰が資金を提供するのか、「特に脆弱な国」とはどの程度を指すのか、といった具体的な内容は今回のCOP28以降で議論されます。
環境ニュース[国際]
対策強化で合意新基金創設も 国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)
https://econews.jp/news/international/8587/
(環境市場新聞72号より 2023年4月5日)
COP28の主要な議題「グローバル・ストックテイク」
COP28ではロス&ダメージ基金の取り組みを具体化させていくほかに、注目を集めるであろう議題に「グローバル・ストックテイク」(GST)があります。これはパリ協定に基づき定めた各国のNDCについて、世界全体の進捗状況を評価する仕組みのこと。2023年から5年ごとに実施することになっています。GSTは全体で2年をかけて実施されるため、2021年から行っていた初回GSTの最終工程がCOP28で行われることとなります。
■GSTの手順
①情報収集 ②技術的評価 ③成果の検討
①ではIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による報告書のほか、各国のNDCに対する取り組み状況を基とする報告書が情報源となります。②の技術的評価は複数回にわたり実施され、COP27でも会期中に開催されました。③で検討結果が各国にフィードバックされ、各国がNDCを更新するための材料とされます(NDCは5年ごとの更新)。
このため、COP28の終了後には各国がNDCを更新(目標の引き上げ)する動きが見られるものと思われます。
IPCCの報告書について 詳しくはこちら
IPCCが第6次統合報告書を公表 温暖化対策待ったなし
https://econews.jp/news/international/8769/
(サステナブルノート 2023年4月26日)
日本、そしてわたしたちへの影響は?
2023年夏に国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰の時代」と表現したように、2023年7月は世界の平均気温が観測史上最高となり、温暖化よりもさらに深刻な気候変動が進行中であることは多くの人が肌で感じています。待ったなしの対策が求められる一方で、ウクライナ侵攻などの影響でエネルギー供給が不安定となり、化石燃料へ回帰する動きもみられています。自国のエネルギーの安全保障を強化することと脱炭素を両立することが難しい状況のなか、パリ協定の目標に対して各国でなかなか芳しい成果が見られていないのが現状です。
GSTの結果を受け、COP28の宣言で温室効果ガス削減のさらなる強化を求める文言が盛り込まれた場合、日本を含む各国がNDCを見直すことになると予想されます。日本が現在の目標である「2030年までに温室効果ガス排出を46%削減」「2050年までにカーボンニュートラルを実現」よりも高い次元をめざすことになるとしたら、官民ともに今以上の取り組みの強化が求められることになるでしょう。企業や個人としても対策が必要なことが出てくるかもしれませんので、今後の動きにアンテナを張っておきましょう。
温暖化で各国に迫る影響について 詳しくはこちら
地球温暖化がもたらす気候変動への影響について~気象庁・気候変動監視レポート2022より~
https://econews.jp/column/sustainable/9769/
(サステナブルノート 2023年9月6日)
頻発する森林火災 地球温暖化が影響?
https://econews.jp/column/sustainable/7202/
(サステナブルノート 2022年8月24日)
産油国UAEでCOPが開催される意義
アラブ諸国は産油国のイメージが強いですが、世界的なカーボンニュートラルの潮流を受け、UAEではクリーンエネルギー開発が進んでいます。砂漠地帯での大規模な太陽光発電や、豊富な天然ガスから水素を製造する体制と国家戦略として整備中です。またCOP28開催に際し、2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロの目標に向けた取り組みを加速させるため国営の石油会社の脱炭素目標を5年前倒しすることを宣言。こうした自国内でのさまざまな取り組みのほか、他国での再生可能エネルギー開発へも活発に投資しています。日本とも、この夏の岸田首相の中東歴訪の際にクリーンエネルギー戦略の面での合意、各種グリーン事業実現のための民間企業同士の共同調査など、協力関係を強化することを約束しました。
化石燃料で栄えてきた国で行われる今年のCOP。議長に石油産業のトップである人物が任命されたことで話題になりましたが、UAEの気候変動対策の中心人物でもあり、上記のようにUAEにおいて国家的にグリーン戦略に注力していることは明らかです。UAEならではの舵取りでどのように議論が進み、どのような結果を導き出すのか注目したいですね。
関連リンク
河村隆一のエコスタディ|COP(コップ)って何?
https://econews.jp/learn/study/1938/
究極のクリーンエネルギー「水素」 製造・貯蔵・利用への期待
https://econews.jp/column/frontline/1072/
(環境市場新聞61号より 2020年8月4日)
社交的な皮をかぶった人見知りなので、取材のときはいつもドキドキしています。
話し手さんがついぽろっと本音を話してしまうようなインタビューをめざしています!
エネルギー分野、特に次世代の燃料や発電・蓄電技術に興味津々です。
好きな食べ物:生牡蠣(あたっても食べ続けています)。
趣味:オンラインゲーム(休日はもっぱら、光の〇士としてエオ〇ゼアを旅しています)。