サステナブルノート

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外来種とは?特定外来生物の扱い方を解説

皆さんは外来種というとどのようなイメージを持ちますか。生態系を壊す悪者でしょうか。しかし、元をたどれば、私たちが普段口にするお米もかつて海の向こうから渡ってきた外来種。とはいえ、実際にイメージ通り生態系を壊したり、人間に害を及ぼしたりする種もいることも事実です。今回は、外来種や害を及ぼす侵略的外来種とその扱い方についてご紹介します。

【目次】
外来種と外来生物
外来生物が及ぼす影響
特定外来生物の取り扱いについて
最後に

外来種と外来生物


外来種とは、人間の活動によって外から持ち込まれた生物のことです。持ち込まれる理由には、大きく分けると意図的なものと非意図的の2つがあります。意図的な持ち込みの例には、食用としての養殖目的、土壌・水質改善のため、愛玩用などさまざまあります。一方、非意図的なものは、船のコンテナなど輸入物資や移動する人間への付着で上陸するなどといったケースです。コメやトマトなどの農作物、牛や豚などの家畜も、元をたどれば意図的に持ち込まれた外来種です。 害をなすとされた外来種は、外来生物法に基づき特定外来生物や生態系被害防止外来種に指定され、駆除の対象となります。この法律では、主に人々の移動や物流が活発になった明治時代以降に海外より持ち込まれた生物を指して外来生物と呼びます。そのため、先述の農作物や家畜などは外来種ではあっても外来生物とはいえません。なお、北海道のカブトムシ(本州以南に生息)のように、日本国内で本来なら生息していない土地に持ち込まれた生物は外来生物ではなく外来種と言われます。

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外来生物が及ぼす影響


持ち込まれた外来種のなかでも、悪影響を及ぼすことなく生態系に組み込まれるものもいれば、在来種に淘汰されるものもいます。しかしその反面、在来種を捕食したり、棲み処や餌の取り合いで競合したりして生態系に甚大な影響を及ぼす場合や、近縁の在来種と交雑して遺伝的かく乱が起きることもあります。こういった外来種は、侵略的外来種と呼ばれ、生物多様性損失の要因として大きな問題となっています。そのため外来生物法では、これらの被害が特に深刻である生物を特定外来生物として指定しています。

・ウシガエル
食用としてアメリカから輸入された。1回で産む卵数は最大40000個と繁殖力が非常に強く、逃げ出した個体が繁殖。捕食と競合で在来種減少の要因に。
アメリカザリガニ*
ウシガエルの餌として一緒に輸入されたが、逃げ出した個体が繁殖。生態系バランスが崩れた結果、水質悪化などを引き起こしている。
ミシシッピアカミミガメ*
ペットとして輸入された。かつては幼体がミドリガメと呼ばれ縁日にも並んだが、サイズが大きくなることや寿命が長いことで飼いきれなくなった飼い主が放流し、各地で繁殖。競合の在来種ニホンイシガメは絶滅危惧種になっている。

日本では強い繁殖力で知られるこれらの外来生物ですが、日本には天敵となる生物が少ない(いない)というだけ。産卵数が一見多かったとしても、元の生息地では天敵に捕食されるなどして爆発的増加をすることもない普通の生物です。逆に、日本からアメリカに輸出された魚のコイや植物のクズは、侵略的外来種となっています。

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特定外来生物の取り扱いについて


このように生態系や私たちの生活にさまざまな悪影響を及ぼす特定外来生物に対しては、外来生物法でその取り扱いについてのルールが厳しく定められています。そのため、許可なく飼育や栽培をすることはできません。許可とは、研究や展示などが該当し、愛玩目的は含まれません。例外として、特定外来生物に指定される前から飼育していたペットに関しては期間内に届出をすることで飼育可能です。ただし、飼えなくなってしまった場合、逃がすことはもちろん、譲渡することも認められておらず、自身で殺処分をしなくてはなりません。
また、虫取りや釣りなどのレジャーでも特定外来生物に触れる機会はありますが、取り扱いには注意が必要です。知らぬ間に法を犯してしまわないよう、ちゃんと知っておく必要があります。
捕獲やその場での観察、その場で放す分には問題ありませんが、生きたままの運搬は禁じられています。種子や卵なども同様の扱いです。また、釣り魚などを食用で持ち帰りたい場合などは、氷に漬けるなどしてきちんと絞めて持ち帰りましょう。
なお、アメリカザリガニとミシシッピアカミミガメに関しては、条件付特定外来生物として指定されています。「条件付」とつくことで一般の特定外来生物と異なるのは、これらの生物に関しては許可や届出なしに飼育、飼えなくなった場合の他人への譲渡ができ、野外で捕まえた個体の飼育も可能という点です。ただし、野外に逃がす行為は禁止されています。一見、甘いルールのようですが、飼育者があまりにも多く、従来のルールでは放流する人が急増し、かえって生態系へ悪影響を及ぼす可能性があることを鑑み、このような条件付での飼育が認められています。

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最後に


野生の特定外来生物は、動物愛護管理法が適用されません。それでも、駆除をする場合はできる限り苦痛を与えないなど倫理的配慮がなされるべきです。外来種は、人間が招いた生き物たち。それが生態系、ひいては人間に害があるからと駆除の対象となっているのです。 非意図的にやってきた外来種については、仕方のない側面があるものの、飼いきれなくなった、管理不行き届きといった理由で逃がしてしまうのはあまりにも無責任です。これ以上外来種を増やすことがないよう、外来種被害予防3原則である、「入れない」「捨てない」「拡げない」を徹底し、生物多様性を守っていきたいですね。

【参考資料】
日本の外来種対策(環境省)
・自然環境・生物多様性(環境省)
・外来種被害防止行動計画(環境省外来生物対策室)
・特定外来生物ウシガエル(中国四国地方環境事務所)

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