【レポート】2024サステナビリティトレンド 行政による中小企業のGX支援制度について
地球温暖化防止およびサステナブルな社会形成のためGX(グリーントランスフォーメーション)が進むなかで、中小企業でもGXを進める機運が高まっている。今回は中小企業がGXを進める際に活用できる支援策や補助金を紹介する。
中小企業もGHG排出量の把握が必要になりつつある
2023年5月に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」が成立したことで、今後は産業におけるエネルギー利用の構造転換が進むと予想される。特に事業活動が活発な中小企業では今後取引先や金融機関から温室効果ガス(GHG)排出量削減の取り組み状況について開示を求められるケースも増えるだろう。中小企業でもGXに取り組むメリットは多数ある。主な点は以下の通りだ。
●エネルギーコストの改善
●資金調達の優位性
●競争力強化・取引先及び売上拡大
●人材獲得力向上
サプライチェーン全体の脱炭素経営を進める上で、温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas)排出量を測定する範囲を示す「スコープ」という単位がある。スコープ1は製造過程などで企業が直接排出するGHG、スコープ2は他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで、間接的に排出されるGHG、スコープ3はサプライチェーン全体で原料調達や物流・販売などで排出されるGHGのそれぞれの量を指す。
単にGHGを減らすのでは経済活動の停滞を招くが、GXは技術革新によりカーボンニュートラルへの取り組みが経済成長の機会となるよう経済・社会システムを変革する試みである。排出量を減らしながら生産性を向上する設備投資などが有効なため、GXに取り組むことでコスト改善と競争力強化などを実現できるケースは多い。また、環境問題に積極的に取り組む企業としてPRすることは資金調達や採用面での優位性にもつながる。ぜひ以下を参考に検討していただきたい。
中小企業がGXに取り組む際の3つのフェーズ
一般的にGXは主に以下の3つのフェーズで取り組む。
①自社の現在地を把握する ・相談窓口、省エネ診断などの受診 |
②排出量等を把握する ・算定ツール等の活用 |
③排出量等の削減に取り組む ・補助金・促進税制等の活用 |
個別に見ていこう。
①の現在地を知るために有効なのは行政の相談窓口などの活用だ。中小企業基盤整備機構はオンラインの相談窓口やカーボンニュートラルチェックシートなどを提供しているほか、環境省・経済産業省も脱炭素化に向けた役立つ情報を発信している。地域と連携した支援団体などもあるのでこれらに相談するのもよいだろう。
②の排出量把握については、日本商工会議所が中小企業向けの排出量算定ツールを提供している。電力・都市ガスなどエネルギーごとに毎月の使用量・料金を入力することで、CO2排出量を自動で計算し、コストの遷移なども把握できる。
③の削減については目的に沿って様々な補助金や投資促進制度が存在する。以下に一例を示す。
事業例 | 補助金名(内容) |
工場・事業場の脱炭素化にむけた設備更新、電化・燃料転換、運用改善など大掛かりな取り組み | SHIFT事業(工場・事業場における先進的な脱炭素化取組推進事業:環境省) |
革新的な製品・サービス開発に必要な設備・システム投資 | ものづくり補助金(中小企業庁) |
省エネルギー性能の高い設備・機器への更新 | 省エネ補助金(環境共創イニシアチブ) |
既存建物の脱炭素改修工事 | 脱炭素ビルリノベ事業(環境省・環境共創イニシアチブ) |
※上記の補助金は2024年10月現在
これらはあくまで一例で、ほかにもたとえばGX事業に進出したい企業向けの多様な補助金及び中小企業投資促進税制などがある。無論、地方自治体単位でも各種制度があり、詳細に見ていけば自社の目的に沿って活用できる制度が見つかるであろう。ぜひ参考にしていただきたい。
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