• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

安全・安心の保障が地域貢献に直結#39/ALSOK

 1965年の創業以来、警備分野のリーディングカンパニーとして業界をけん引する綜合警備保障株式会社(ALSOK)。グループ規模が拡大する中、2017年1月には社長をトップとする環境委員会を発足し、全社的な環境対策を推進している。さらに2023年3月にはグループ全社で環境マネジメントシステムISO14001を取得した。さらに同年4月には本社が「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」(国連と民間企業が健全なグローバル社会を築くためのサステナビリティ構想団体)に加盟するなど、グループを挙げて持続可能な社会の実現を意識した経営に取り組んでいる。

「私たちのサービスと時代のニーズが合致してグループが成長するにつれ、事業の影響は広範囲に及ぶようになりました。それだけに環境への配慮や負荷の低減といった要素がより重要になってきているのです。具体的な取り組みとしてはグループ全体でのカーボンニュートラルの実現に向けてサプライチェーン全体で電気自動車およびハイブリッド車の導入、照明や空調設備のリニューアル、節電などの省エネを推進しています」(CSR推進室 室長・干場 久仁雄さん)

 警備会社の使命はお客さまの安全・安心を守ること。地域住民の安全・安心を保障することは結果として地域貢献と直結している。

 例えばALSOK千葉株式会社で取り組む事業の1つに「ジビエ工房茂原」がある。千葉県内の有害鳥獣は年々増加し、農業被害は今や4億円以上となっている。一方、近年は狩猟従事者の高齢化が進むなど、継続的な駆除体制の維持が難しくなった。これを解決する方策の1つが従来ほぼ捨てられていたイノシシなどの肉を譲り受け、食肉へ加工し販売する同工房の立ち上げだった。「ALSOK千葉は地域住民の暮らしを守るため、これまでも有害鳥獣対策に関してさまざまなサービスを提供してきました。工房立ち上げはそのサービスをさらに進化させ、狩猟従事者の報奨金受け取り手続きなどを代行する代わりにシカやイノシシを受け取り、商品化して販売しています。工房立ち上げにより持ち込み量は順調に増え、地域のサステナビリティの確立とジビエの有効活用に役立っています」(ALSOK千葉 取締役・竹内 崇さん)。

これらの商品はネットでも販売している

 同施設では国連などが推奨する国際的な衛生管理手法であるHACCP(ハセップ)を導入し、鮮度の高いジビエを商品化しており、地元の割烹や通販などで人気を呼んでいる。グループ内ではほかにも「ALSOKお墓みまもりサービス」「富士山山頂の雑踏の警備」など地域のニーズから生まれた事例が多数ある。地域の「困りごと」を解決することで事業を成立させる点が大きな特長と言えよう。

ジビエ工房茂原

 同グループは今後も先進的なチャレンジと独創性の発揮を通じ、お客様と社会の安全安心を支える強靭な「綜合安全安心サービス業」を目指していく。


こぼれ話

ALSOKのCSR推進室を取材した際、「社員が同行しますのでぜひ現地に行って見てきてください」とのお話をいただき、ジビエ工房茂原を訪問してお話を伺うことができました。この工房を立ち上げた方はすでに引退されていたのですが、その方は2015年に有害鳥獣の処分に関わるようになってから、ただ捕まえて、あとは焼却か埋設するだけの状況にむなしさをおぼえ、どうにかして命を活かしたいと強く思ったそうです。工房建設はそうした1人の社員の思いから出発しています。警備会社が専門外の食肉処理施設を建設するのはハードルが高く、さまざまな困難の連続だったそうですが、一歩ずつ前進しながら2020年7月、ついに施設が完成。同年11月より販売を開始しました。

取材当日には3頭のイノシシが捕獲され、工房に運ばれてきました。モニター越しではありますが、その解体シーンも見せていただきました。今年はなぜかイノシシの捕獲数が減り、シカの捕獲数が増えたそうです。「自然相手なのでなかなかこちらの思うようにはいきません」とおっしゃっていたのが印象的でした。 敷地裏には捕獲されたシカ・イノシシを弔う「獣魂碑」が建立されていました。社員は出社してくるとまずそこに手を合わせ、命の恵みをいただくことに感謝するそうです。同社は地域の暮らしを守ることをとことん追求しているのだな、と実感した取材でした。

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