クジラのおなかからプラスチック|エコブックス
プラ生産量は〈日本の人口×10〉頭分のゾウの重さ
全国学校図書館協議会選定図書の子ども向け書籍。だが、その内容はむしろ何の疑いもなくプラスチックの便利さを享受してきた大人にこそ読んでもらいたいものだ。海岸に打ち上げられたクジラの胃から大量のレジ袋が発見されたり、複数の大手外食チェーンがストロー廃止に乗り出すなど注目を集めるプラスチックごみ問題。本書は問題の深刻さをつまびらかにするとともに、プラスチックの発明当初からの歴史、物質としての構造、自然界に残留する仕組み、5ミリメートル以下のかけら(マイクロプラスチック)になるプロセスなども網羅する。しかも子どもにも理解できる平易な表現と、イメージを喚起させる的確なたとえによって。 例えば、これまでに生産されたプラスチックの総量を83億トンと示し、その重さは日本に住む人すべてがアフリカゾウになったときの10倍に相当するとイラストを交え説明する。また、ゆでる前のインスタントラーメンにたとえ「1本1本の細長いめんが、1個のポリエチレン分子です。硬いめんのかたまりがプラスチックです」(76頁)と説く。 食品にプラスチック素材の包装をしなければ、傷みが早まり食品ロスが増える可能性にも触れる。人類が生み出したこの素材を、頭ごなしに否定はせず、どうすればよいかを一人ひとり考えるのが大切と訴える姿勢も好ましい。
旬報社 1,400円+税
ほさか なおき
東京大学理学部地球物理学科卒業。同大大学院で海洋物理学を専攻。1985年読売新聞社に入社。おもに科学報道にたずさわる。2010年に東京工業大学で博士(学術)を取得。2017年まで東京大学海洋アライアンス上席主幹研究員。
現在はサイエンスライターとして、海洋や気象、環境問題などをテーマに執筆をおこなっている。
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