• 環境政策最前線
  • 再生可能エネルギーの活用や供給システムなど、環境政策を早稲田大学の横山隆一名誉教授が解説します。

配電事業ライセンス制度が生み出す新ビジネスへの期待

 2020年6月に国会で可決・成立した改正電気事業法が施行されるのは2022年4月の予定である。改正法の中には配電事業のライセンス化が盛り込まれており、その制度が実施されれば、電力事業は大きく構造転換していくと見られる。
 これまでは発電所からの大電力を流す送電網も、需要家につなぐ配電網も、ほとんどが一般送配電事業者(大手電力会社)によって所有され管理運営されていた。そのうち需要家に近い配電網を独立させ、新規事業者に譲渡または貸与して運用できるよう認可を与えるのが、配電事業ライセンスの制度である。特定の地域で大手電力会社がすでに整備した配電網や設備を、新しい技術を所有していたり、地域特性を活用できたりする事業者に利用させ、コスト削減や災害対応などの向上を狙う。特に災害への対応では、経済産業省が災害に強い地域マイクログリッドの推進・普及を目指しており、配電事業ライセンスがレジリエンス(自然災害などで電力設備が支障をきたしても直ちに復旧し給電を再開する能力)の向上に資すると期待されている。
 これまでの電力グリッドでは、大規模電源と需要地を結ぶ送配電網の拡充や送配電網の複線化などでレジリエンスを高めてきた。しかし最近は、太陽光や風力といった従来想定されていなかった分散型電源が増加したことで送配電網の送電容量が上限値近くまで達する地域が急増するなど、電源多様化に伴った設備構成の見直し・増強が必要になっている。地震や台風、大雨などの自然災害による長期停電(北海道全域や千葉県広域停電)が相次いで発生しており、電力の災害耐性向上も急務だ。
 配電事業への新規参入者にはガスや水道など他のインフラ事業者も考えられる。異業種連携の一体運用でコスト削減が図れるからだ。IT分野の企業なら課金や需要制御システムなどのイノベーションも期待できる。
 また出資などによる自治体の参加もある。太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)を多数設置できる地域では、再エネの余剰電力を利用した水素製造やEV充電などの新サービスを組み合わせた事業も想定できる。
 新規参入の企業や自治体が、異業種連携のアイデアや地域特性を生かした新ビジネスを開花させれば、法改正がもたらすメリットは当初の目論見以上に大きなものになるだろう。

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