【特集】安心・安全の供給体制を実現する電気料金の仕組み–燃料費調整制度とは
本コラムは当社提供番組『省エネの達人「企業編」』内の省エネコラムと、当社導入事例サイト内で展開していた『環境コラム』を合わせて新たにリニューアルしたものです。
5月27日、旧一般電気事業者と呼ばれる大手電力10社より、7月の電気料金が発表されました。
各社の発表によると1ヵ月あたりの料金でみると標準的な家庭の場合、東京電力で8871円(前月比の影響額は306円増)。同様に北海道電力では8763円(299円増)。中部電力では8516円(260円増)。九州電力では7271円(18円増)となっています。
毎月の電気料金は変動している
一般的な電気料金は、燃料価格を電気料金に反映する燃料費調整制度に基づいて設定されています。
燃料費調整制度とは、火力発電に利用する燃料の価格変動を電気料金に迅速に反映させるため、変動に応じて毎月自動的に電気料金(燃料費調整単価)を調整する制度。先日発表のあった7月の料金は2022年2~4月に輸入した燃料価格などを基に算定しています。
電気料金の変動には、さまざまな事象が絡み合ってきますが、今回はロシアのウクライナ侵攻にともない、液化天然ガス(LNG)や石炭などの燃料価格が高騰傾向にあることなども理由として挙げられます。
日本はエネルギー資源に乏しく、ほとんどの発電燃料を輸入でまかなっています。このため世界の経済状況や国際情勢が燃料価格に大きく影響してきます。燃料費調整制度には基準燃料単価が決められており、今回のように燃料価格が基準よりも高いときは燃料費調整単価も上がり(プラス調整)、安いときには引き下げ(マイナス調整)られ、電気料金も安くなります。実際に最近では2020年から2021年の秋口にかけてマイナス調整が続いており、それが電気料金に反映されていました。
また燃料費調整制度に基づく家庭向けの電気料金には、利用者に転嫁できる金額に上限(基準時点の1.5倍)が設けられています。燃料価格が急激に上がっても、そのすべてが電気料金に転嫁されるわけではありません。利用者保護の観点からこれらの仕組みになっています。
仮に電気料金が変動しなければ、燃料価格の高騰は発電事業者が負担することになります。本制度は発電事業者の経営環境の安定を図ること、ひいては需要家に電気が安定して届けられるための環境を守る仕組みともいえるのです。
この夏の供給予備率は3%
電気料金の推移は上記でお伝えしたような状況ですが、一方でこの夏の電力需給については「極めて厳しい状況」との見解が出ています。3月の福島県沖地震の影響で停止した火力発電所の復旧の遅れや、原子力発電所の再稼働が進んでいないことなどが要因として挙げられていますが、くわえて猛暑予想も重なっています。
中部・東京・東北各電力の管内で、7月の電力の供給予備率は3.1%となる見通し。3%は安定供給に最低限必要とされる割合であり、それをかろうじて上回る数字です。 政府では、この夏、家庭や企業に向けて節電を要請しており、全国規模での節電要請は7年ぶりとなりいます。また電力会社にも休止中の火力発電所の再稼働や燃料の追加調達が求められています。
電力の供給予備率とは
電気は貯めておくことができません。そのため急な気温の上昇や自然災害、発電所のトラブルなどに備えて予想される需要よりも余裕をもっておく必要があります。「電力の供給予備率」は、最大の電力需要に対して供給力がどのくらい余裕をもっているのかを測る指標として用いられています。「供給力」から「最大需要」を引いた値を「最大需要」で割って算出します。電力需要は一定時間の平均値に対して上下3%程度の振れが出るため、予備率3%は最低限必要な量となるのです。さらに何かしらのトラブルがあり急激に供給力が低下した場合や、需要の増加を見越して、7~8%以上の予備率を確保することが一般的です。
最後に、この夏の厳しい電力需給を前に知っておきたい政府の動きなどを2つご紹介します。
◇電力逼迫時の「注意報」新設へ
経済産業省では、電力需給の逼迫が予想される前日に家庭や企業に節電を促す「注意報」や、前々日時点でその可能性を伝える「準備情報」を今夏までに新設する方針です。
2022年の3月に東京電力管内で初めての「電力需給逼迫警報」が出されましたが、このときは発令が前日の午後9時頃になったため企業などの対応が遅れました。企業側からもできるだけ早い周知を求める声が上がっており、これを受け早めに注意喚起する仕組みづくりが進んでいます。
現状では予備率が翌日に3%を下回ると見込まれる場合に「電力需給逼迫警報」を出すことになっていますが、これを今後は5%を下回りそうな場合に「注意報」が出されるように変更する予定です。発令のタイミングは前日の午後4時ごろが目途となっています。また注意報の新設のほか、事前に対象企業や電力の消費抑制量、日時を指定した「使用制限令」の準備も進んでいます。
◇デマンドレスポンス(DR)の普及に向けて
経済産業省では今夏の電力逼迫時の対策としてデマンドレスポンス(DR)の活用を呼びかけています。
DRとは、電力の需給状況に合わせて需要家が電気の使い方をコントロールすることをいいます。電力の需要が高まり市場価格が高くなる時間帯は電気の使用を控え、電気の安い時間帯に積極的に電気を使うことで電力需給逼迫の解消に寄与するとともに、電気料金を抑えることにもつながっていきます。
資源エネルギー庁では勉強会開催や産業界への呼びかけを通して、DRの普及促進に努めていく考えです。
【参考資料】
2022年度の電力需給見通しと対策(資源エネルギー庁)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/050_04_04.pdf
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