パリ協定目標には不十分

世界の温暖化対策 総評価

グローバル・ストックテイク統合報告書

国連気候変動枠組み条約事務局は2023年9月、世界全体における地球温暖化対策の進捗を評価するグローバル・ストックテイク(GST)の統合報告書を公表した。2021年から約2年をかけて17万ページを超える情報を分析し、技術的対話などの議論を重ねたうえで重要な所見を17項目にまとめた。温暖化を1.5℃に抑えるなどの目標を掲げるパリ協定は一定の成果を上げているものの、現状の取り組みでは目標達成は難しく、一層の対策強化が必要と警鐘を鳴らした。
 パリ協定では、すべての国が温室効果ガスの排出削減目標を提出し、それを5年ごとに更新する。その際、GSTで報告された内容が勘案され目標の見直しがなされる。更新する次期目標の提出期限は2025年で、その2年前に踏み台になる情報を公表することで各国が対応できる期間をつくっている。実際には今回の報告書も含めたテーマ別文書などを締約国会議で議論し採択する。
 今回まとめられた17項目の中には、現状の対策が不十分で目標の上積みが必要であることのほかに、各国政府だけでなく企業や民間団体など非政府のステークホルダーから協力を得る必要性、温暖化の影響を軽減し適応するための対策強化や損失と損害(ロス・アンド・ダメージ)の回避、数兆ドル規模の資金を開放して気候変動対策にシフトさせる、といった指摘が挙げられている。
 各国は気候危機対策をさらに推し進めるよう求められている。

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