環境教育の現場から

全国各地の環境教育授業の様子をレポート。地域の特色を活かし地元住民と協力しながら進める授業や、企業が出張して行う出前授業などユニークな取り組みを紹介

Vol.7 まずは楽しんでもらうことを考える/神奈川県立生命の星・地球博物館

箱根登山線入生田いりうだ駅の目の前にある神奈川県立生命の星・地球博物館。1995年に横浜馬車道にある神奈川県立博物館(現・歴史博物館)の自然史部門が独立する形で開館した。
46億年にわたる地球の歴史と生命の多様性を、時間の流れを追ってわかりやすく紹介。恐竜の化石や地球に落ちてきた隕石、生き物の標本など約1万点を展示する。手を触れてよい資料もある。
そんな常設展と併せ、期間限定で開催されるのが特別展。現在は2026年11月8日まで「しらべて分かった!里山にくらす動物たち」が開かれている。特別展は同館に在籍する20人以上の学芸員がそれぞれの研究成果を伝える場。今回は生活に結びついた人里近くにある「里山」で、そこに生きる動物の生態変化などを紹介した。人の手で管理されていた里山は、人口減少や高齢化などによって放棄され、里山特有の生態系が崩れている。自然環境が劣化している状況にどう対処していくべきかを考えるきっかけも与える。

開催中の特別展「しらべて分かった!里山にくらす動物たち」は2026年11月8日まで。動物標本に触れられるコーナーもある。

地域の自然環境を活かした講座も

特別展と同様に学芸員が中心となって、各種講座を実施するのも同館の特徴だ。内容は子ども向けから学校教員向けのものまで幅広く用意。館内の実習実験室で行うだけでなく、山林や海岸などに出向いてのフィールドワークもある。
学芸員の石浜佐栄子さん(企画情報部企画普及課長)の専門は地質学。講座の企画を考えるときは「これをやったら楽しそう、というところから着想しています。正直、環境についての教育という点はあまり意識していません」と言う。
地層の状態から大地の歴史をひもとく地質学。一般的にはイメージしにくいが、過去の気候変化を分析できるなど環境分野にも有用な情報をもたらす。そのためには、調査すべき価値ある場所を残しておく必要がある。
「重要な地層を保存する意義を、近隣住民をはじめ幅広い世代の人たちに理解してもらわなければいけない。それには押し付けではなく、まずは楽しみながら知ってもらうことが第一と考えています」
石浜さんが次に計画しているのは3日間にわたって地質について学び「研究」を体験できる講座。初日はフィールドワークで岩石などを採集し、2、3日目にはそれらの観察と室内分析の初歩を学ぶ。それによって、はるか昔にその地でどのような出来事があったかを探っていく内容だ。対象は小学5年生〜高校生。学校の試験期間と重ならないよう日程を組む。
「もちろん楽しんでもらうのが前提です。そして将来、子どもたちが学ぶ選択肢の1つに地質学を入れてほしいという期待もあります。やはり自分の携わる専門分野に興味を持ってもらえるのはうれしいですから」 各学芸員が自身の研究と向き合い、それを「知ってもらう」「興味を持ってもらう」ことに喜びを感じる。この博物館は、そうした気持ちの流れを主体的に利用して、自ずと導かれる環境教育につなげている。

毎春恒例の講座「礒の生きものウォッチング」の様子。毎回定員超過で抽選が必要な人気企画だ。


神奈川県立生命の星・地球博物館(https://nh.kanagawa-museum.jp/)

特別展「しらべて分かった!里山にくらす動物たち」(https://nh.kanagawa-museum.jp/exhibition/temporary/special20260718.html)

こぼれ話

こちらの博物館を知ったきっかけは、小田急線小田原駅改札内に置いてあった箱根観光のパンフレットを集めたコーナー。同館で開催されている講座「地球を楽しむ博物館の講座」の開催内容のリーフレットを見てとても面白そうだと感じ、取材をお願いしたところ快くお受けいただきました。
取材時にはちょうど特別展「しらべて分かった!里山にくらす動物たち」が開催されるということで、新聞紙面では講座の話とあわせてそちらのご紹介が中心となりました。特別展と連動した講座も実施されています(事前申し込みが必要)。
ちなみに、紙面でも紹介した実際に触れるコーナーが大変好評で、取材の数日前、同館のX(旧Twitter)で発信された投稿がバズっていました!

※現在は資料保護のため配置換えがされていますが、同様の体験が可能です。

こちらの特別展は2026年11月8日(日)まで。興味のある方はお早めに!
常設展では化石や生き物の標本が盛りだくさん。こちらもぜひ現地で楽しんでみてください。

ちなみに、同館ではボランティアの方も精力的に活動をされています。博物館のボランティアとは研究や博物館のガイドなどを無償でお手伝いされている方のこと。この特別展でもボランティアの方が作った剥製が展示されていました。
ボランティアのメンバーは、神奈川県内の方から県外の方まで幅広くいらっしゃるそう。同館に限らずいろいろな博物館でボランティアの募集があるそうなので、これから研究職に就く学生の方、研究活動が好きで趣味として楽しまれている方など、自分の好きな分野の博物館で募集がないか調べてみても良いですね。

ボランティアの方が製作した鳥類標本(特別展に展示)
入生田駅からの道のりには看板が。迷わずたどり着けます。
 

エントランスでは大きな恐竜と大魚の化石がお出迎え。
 

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