【第3回】持続可能な成長とゼロカーボンの両立/横浜市

ゼロカーボンの取り組みを先導

 2011年に横浜市地球温暖化対策実行計画を策定するなど多くの実証実験等を通じ対策の深度化を進めてきた横浜市。2018年には「Zero Carbon Yokohama」を宣言、2021年には2050年までの脱炭素化を目指す「ゼロカーボン市区町村協議会」が設立され、林文子横浜市長が会長を務めるなど、温暖化対策で他の自治体をリードする存在だ。
 「2018年度まで温室効果ガス排出量が順調に減少しています。2030年には2013年比30%削減を掲げていますが、今後は国の動向も見据えつつ、さらなる取り組み強化を図ってまいります。産業部門の省エネ推進が進んでいることと、市で最も二酸化炭素排出量の多い家庭部門において、ごみの削減や再エネ活用といった市民の皆様一人ひとりの取り組みが成果となって表れています」(温暖化対策統括本部調整課担当課長宮島弘樹さん)
 毎年実施している「環境に関する市民意識調査」では、「地球温暖化対策」への関心の割合が年々増加し、気候変動等による気象変化の激しさを実感する人も92.8%となった。日々の暮らしで気候変動を実感し、行動の変化につながっているといえそうだ。

SDGsでデザインする未来の横浜

 横浜市は2021年5月時点で約378万人を誇る日本で人口が最多の市町村だが、その横浜市とて将来は盤石ではない。市の推計では人口は近い将来減少に転じると予想されるほか、すでに周辺自治体への転出超過傾向が見られるという。都市としての魅力を磨き、活力を高めるために注力するのがSDGs未来都市・横浜の推進だ。
 「〝環境を軸に、経済や文化・芸術による新たな価値・賑わいを創出し続ける都市の実現〞をビジョンに掲げ取り組んでいます。その核となるのが、環境・経済・社会的課題の統合的解決に向けて、市民・事業者・NPOなどさまざまな主体の連携によるイノベーション創出を支援する中間支援組織〝ヨコハマSDGsデザインセンター〞の活動です。さまざまな主体が連携して試行的取り組みを行っています」(温暖化対策統括本部SDGs未来都市推進課長黒田美夕起さん)
 例えば横浜市所有の水源林の間伐材を利用し、木のストローをつくる取り組み。同センター所属のコーディネーターの発案で、製作は障がい者が働く特例子会社が担い、市内ホテルのバーや飲食店で使用される。これによりプラスチック素材の使用抑制、障がい者雇用という環境・経済・社会の好循環と、間伐材を廃棄せず新たな用途を見出し、生まれ変わらせるという〝アップサイクル〞が成立している。
 「現在市が力を入れているのは独自のSDGs認証制度〝Y-SDGs〞です。持続可能な経営・運営への転換を後押しするため、事業者の取り組みを4分野・30項目で評価し、3段階で認証します。最上位または上位の認証を受けると中小企業向け融資制度の対象となるほか本市発注工事の一部において評価項目に加点されるなどのメリットがあります」(黒田さん)
 持続可能な成長とカーボンニュートラルの両立を目指す横浜市。対策を重層的に進めるためにさまざまな主体が有機的につながる〝オール横浜〞で取り組んでいく。

横浜市役所庁舎

2020年度に供用開始した横浜市役所新庁舎は、
再生可能エネルギー100%を実現している。

こぼれ話

 取材に伺ったのは2021年5月。新型コロナウイルス感染症対策として日々の検温と事前の消毒などの対策を講じた上で横浜市役所を訪問しました。ちなみに対面式の取材は久しぶりです。横浜市役所は2020年度に供用開始したばかりの真新しい庁舎で、市の清掃工場が発電した電気を使うことで再エネ100%を実現しているとのことでした。
 市役所を出ればそこには横浜の新名所となっている桜木町駅と新港ふ頭を結ぶロープウエイ「YOKOHAMA AIR CABIN(ヨコハマエアーキャビン)」が走っています。そんな新たな観光スポットが生まれる横浜でも将来的には衰退傾向にあるという事実は意外でした。だからこそSDGsを推進することでさらに魅力を高めていくというお話に感銘を受けました。ちなみにヨコハマSDGsデザインセンターのウェブサイト(https://www.yokohama-sdgs.jp/)には他にもさまざまな取り組み事例が載っています。

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