馬との触れ合いで 笑顔を取り戻してほしいScene 42
元気をくれた温かな励まし
昨年9月に上陸した台風15号は、関東地方、特に千葉県に甚大な被害をもたらした。
全国で35カ所、千葉県内で3カ所の乗馬クラブを展開する株式会社乗馬クラブクレイン。同社が運営する乗馬クラブクレイン千葉富里は会員数約1200人で、50人のスタッフと90頭の馬が在籍している。
体験スクール担当の梶野汐里さんは台風通過後の様子をこう話す。
「馬房はシャッターを下ろし、土のうを積んで備えたお陰で浸水を免れ、馬たちは無事でした。しかし場内の桜の古木や馬場周辺の林の樹木などが多数折れました。馬場には折れて飛んできた枝葉がうずたかく積み上がり、とても乗馬ができる環境ではありません。出勤できたスタッフから順次片づけを始めました。水道が止まらなかったのは幸いでしたが、3日間停電してしまい馬たちは暑さの中、扇風機に当たることもできず、じっと過ごしていましたね」。
通常はナイター営業も行うが、復電後も周辺には停電地域が多かったためナイターは自粛。通常営業に戻るには約2週間を要した。「会員には自宅が被災し大変な思いをされた方もいるのですが、心配してひっきりなしに連絡をくださいました。その温かな気持ちに励まされ、スタッフはとても元気づけられました」。
千葉県ではその後も台風19号や21号の影響による大雨などがあり、日常生活は再建途上という人も多い。また、観光自粛などの影響で、同クラブを訪れる人の数も減少気味だという。そんな状況を鑑み、同クラブでは通常よりも割安な乗馬体験コースも用意しているそうだ。「乗馬は有酸素運動でダイエット効果なども見込めますが、馬との触れ合いで癒されるという方も多いです。被災された方も遠慮なくお越しいただき、笑顔を取り戻していただければ嬉しいですね」。
こぼれ話
同クラブには有名な競走馬を父や母にもつ馬もいました。そして馬たちは賢く、梶野さんが「おとなしくしてね」と鼻をポンポンと撫でると、じっとして写真を撮らせてくれたのが印象的でした。
そして、乗馬クラブの周辺には台風で被災し、「しばらく休業します」と書いたお店がいくつもありました。 温暖化でこうした大型台風の数は今後増えるとの予想もあります。備えの大切さを痛感した取材でした。
日々2児の子育てに奮闘するお父さん。
自然と触れ合うのが何よりも好きです。